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記事: 糸と手からうまれた服

ファッション

糸と手からうまれた服

デザインのサケミです。
寒波到来で冬の寒さの本番はこれからのようですが、
企画している立場としては、ピープルツリーの春物のスタートが待ち遠しいこのごろ。
今回の春夏のコレクションは楽しみなアイテムがたくさんで、
どれを買おうかと柄やデザインを思い浮かべながら、わくわくコーディネートの妄想真っ最中です。



今季のテーマは“Deep Sea”。
深い海の静かな青さ、海底の砂や岩、鉱物、動植物たちを連想させる
色や柄をベースにコレクションをつくりました。
なかでも、手織りのシャンブレー生地に手刺繍をほどこした
軽めのコートやドレス、パンツが今週から店頭に並び始めます。


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生地は波打つ静かな海をイメージしたものです。
そして、深海で揺らめく植物を刺繍の抽象的なパターンで表現しました。


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この洋服をつくっているのはバングラデシュの「タナパラ・スワローズ」です。
バングラデシュの首都ダッカから北西へ車で6時間。のどかな風景の広がるタナパラ村にあります。
タナパラ・スワローズで働くのは、ほとんどが女性。
バングラデシュだけでなく多くの国で手織りの作業は男性の仕事とされていますが、
ここでは手織りも女性の仕事です。


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手織りの生地ができるまでの工程について、少しだけ説明しましょう。

まず、糸をあらかじめ染め、生地の長さ、幅に必要なたて糸を準備します。
張りを均一に保ちながら道具に1本ずつ通して巻いていきます。
道具を挟んで向かい合わせに座り、1本ずつたて糸を通していくのです。

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ちなみに日本の着物の生地幅は約10寸(38cmぐらい)幅で、たて糸が1200~1300本必要ですから、
この生地の場合、約110㎝幅なので、およそ3700~4000本くらいの糸を通すことになります。
細い糸になれば、さらに多くの本数を通さなければなりません。
1本ずつですから、本当に根気のいる作業で、正確さも必要とします。

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次にリードと呼ばれるクシのようなものに糸を通します。
これは、たて糸の幅を均等に保ち、よこ糸の詰め具合を整えるものです。
よく手織りでトントンと音がするのを聞きますが、このリードを打ち込むときの音がそれなのです。

手織りの場合、織り始める前の準備がとても重要で、
織り始めたら約7割進んだことになると言われるくらい準備には根気と手間がかかります。

いよいよ織り始めです。

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この生地の特徴は、よこ糸を1本ではなく2本一緒に織ることで、凹凸があるように見せていること。
波打つ静かな海のイメージがこれです。
よこ糸2本の色をそれぞれ違う糸にすることで、
表面に見える色がちらちらとランダムに入れ替わり、不均等な横縞状になるのです。
なんとなく想像していただけたでしょうか?

魅力は手織りの生地だけではありません。
手刺繍も大きなポイントとなっています。

この刺繍は以前、タナパラ・スワローズを訪ねたときに、
私が描いた刺繍のデザイン案を現場の職人さんたちに渡して見本をつくってもらいました。
最初の試作品はカラフルな糸で刺繍してくれたのですが、
その中の柄のひとつを今シーズンのテーマ“Deep Sea”に合わせ、単色の刺繍に変更。
立体的なステッチがコートの袖口やドレスのデコルテまわりに自然に溶け込んでくれました。



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サンプルをつくる段階で、生地と相性のいい刺繍の色になるよう修正したり、
刺繍のバランスを変えたり、さらにサイズごとに刺繍の配置を微妙に調整したり……。
つくり手さんたちとのやりとりを重ねて、ようやく製品にたどり着きました。

もちろん、刺繍も女性たちの手によるものです。
糸を染め、生地を織り、刺繍をほどこし、裁断や縫製を経て、洋服へと仕立てていくのです。

最後にアイテム別のおすすめポイントを。

いちばんのおすすめはさっと気軽に羽織れるコートです。
裏地なしのコートはブラウスの上にはもちろん、カジュアルなTシャツの上に羽織るだけで
エレガントに装うことができます。
襟のないタイプですが、襟ぐりにデザイン性があるので、きちんと感を持たせてくれるのです。
袖丈はブレスレットが見えたり、軽やかな印象になるように、ちょっとだけ短めの長袖です。

ワンピースはデコルテ部分の刺繍がアクセサリー代わりになり、それだけでやさしい華やかさが。
ウエストを軽く絞った人気のシルエットです。
ニットのカーディガンやボレロとも合わせやすく、
なんといってもこのワンピースは、着るだけで女子力アップする見栄えが魅力です。

パンツはヒールのあるパンプスでもフラットな靴でも合わせやすい、
ややワイドなクロップド丈にしました。
サンプル段階で、丈感を微妙に修正して、トップスと合わせやすいバランスにしています。
個人的にはシルクのプリントブラウスやきれいめのカットソーと合わせてみたい!と思っています。

みなさまにも、心弾む春の訪れを、軽やかな春の装いで楽しんでいただけたらうれしいです!


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