フェアトレード、さらにオーガニック
ピープルツリーのブランドロゴがついている商品は、すべてがフェアトレード製品です。
さらに、コットン素材の衣料品の8割以上がオーガニックコットン製。
そのほとんどのアイテムがオーガニックコットンを100%使用しており、
ストレッチ性や強度など使い心地を良くするための混紡生地も、
オーガニックコットンの含有率は95%以上です。
なぜ、オーガニックコットン?
オーガニックコットンとは
下の写真はインド・グジャラート州のオーガニックコットン畑にて(2011年)
オーガニックコットンは、有機農法で育てられたコットンのこと。
一般的なコットン栽培に使われる化学肥料や殺虫剤、除草剤などに頼らず、有機肥料を使ったり天敵に害虫を捕食してもらうなど生態系の営みを大切にする栽培方法で、3年以上の実績が認められるとオーガニックコットンと認証されます。
誤解されることが多いのですが、オーガニックコットンとそうでないコットンの違いは栽培の過程にあり、繊維の品質に差が出るわけではありません。
品質は、栽培方法よりも品種や加工方法に大きく左右されます。
また「オーガニック」というだけで健康によいものだと思われがちですが、原綿となった段階で農薬などの残留はほぼなくなります。身に着ける人の健康や着心地に影響するのは、生地の加工や染色などの方法や、使用される化学物質のほうが大きいと言えるでしょう。
それではなぜ、ピープルツリーはオーガニックコットンにこだわるのでしょうか?
つくる人の健康と生活、自然環境への影響に大きな違いがあるからです。
コットンが環境や人に害を及ぼしている?
コットン栽培における農薬使用の問題点について調査したレポート“Is cotton conquering its chemical addiction?”(PESTICIDE ACTION NETWORK UK 2018)
Tシャツやジーンズから下着までさまざまな衣料品に使われるコットン。
その栽培地域は世界80カ国に及び、アメリカやブラジルのように広大な畑で機械化された大規模な栽培が行われている国から、インドやパキスタンなど小規模農家が多い国までさまざまです。
コットン栽培に携わる人の90%以上は途上国の小規模農家ですが、そこには多くの問題が横たわっています。
コットンは害虫の被害を受けやすいことから、殺虫剤を初めとする農薬が多く使われます。
世界の耕地面積に占めるコットン畑は2.4%に過ぎませんが、世界の殺虫剤の16%がコットン畑に撒かれています。
直接口にする食料であれば、農作物の残留農薬に厳しい規制がありますが、加工により残留がほぼなくなるコットンは、農薬の使用量が問題視されにくいかもしれません。しかし、農薬の影響をもっとも受けるのは栽培に携わる農家の人びとです。
農薬は呼吸や皮膚から体内に入ると吐き気や頭痛といった急性中毒やガンなどの疾患を引き起こすため、使用には十分な注意が必要です。
しかし、途上国では防護マスクの使用や適切な使用量などが徹底されず、健康を損ねる人や最悪の場合は命を落とす人が後を絶ちません。
文字が読めず説明書が理解できていなかったり適切な指導を受けられていない場合もありますが、貧しい農家の人びとは、たとえ必要性を理解していても防護用品を買う経済的余裕がなくあきらめざるを得ないのです。
WHO(世界保健機関)は、2012年に世界で農薬の被害で亡くなった人は19万人で、その84%が途上国の人びとであると報告しています。
また、農薬は土壌や水、大気に排出されて生態系に悪影響を及ぼす危険がありますが、使用の規制も国によっては不十分であったり、規制があっても守られていなかったりします。
毒性が高く多くの国で使用が禁止された農薬が、未だに使用されている国もあります。
オーガニックコットンが農家を苦しみから救う
インドにおけるコットンの収量と殺虫剤の使用量、Btコットン(遺伝子組み換えコットン)の栽培面積の比率の推移。前述の“Is cotton conquering its chemical addition?” より ※日本語訳は引用者による
コットンの生産量が世界一のインドでは、特定の害虫に強い遺伝子組み替えコットンが2002年に導入され、殺虫剤の使用量を減らして収穫を増やすと期待されました。しかし、かえって他の害虫の被害が増えて別の殺虫剤が必要となり、新たな遺伝子組み換え品種と新たな農薬の開発といういたちごっこが続きました。2013年には、インドで栽培されるコットンの95%が遺伝子組み換え品種になりましたが、殺虫剤の使用量は2002年以前よりむしろ増加したのです。しかも、収穫量は2007年以降ほぼ横這いになっています。
農家の人びとを苦しめるのは、農薬による健康被害や土壌汚染だけではありません。
農薬は、貧しい農家にとって高価なものです。しかも、使い続けるうちに虫や草が耐性を持って効かなくなるため使用量を増やさなければならず、出費はどんどんかさみます。
また、遺伝子組み換えの種から育つコットンは、次世代に同じ性質を引き継がないため、種を毎年買い続ける必要があります。
資金を持たない小規模農家は、農薬や遺伝子組み換えコットンの種を買うために毎年借金をし、収穫後に返済するのが一般的です。しかし、農薬が効かなくなって不作に見舞われると借金を返せなくなり、経済苦によって自殺に追い込まれる人も出るのです。
インドでは、コットン栽培が盛んなマハラシュトラ州やアンドラプラデシュ州に農家の自殺者が集中していることが明らかになっています。
私たちがオーガニックコットンを選ぶことは、健康被害や経済的な負担から農家の人びとを守り、持続可能な発展を支えることにつながるのです。
それは、フェアトレードが目指す貧困問題と環境問題の解決に通じます。
オーガニック&フェアトレードコットンを未来の「あたりまえ」に
世界のコットン総生産量に占めるオーガニックコットンの割合は、2020年時点でまだ1%。しかし2016年にこの比率が0.5%であったことを考えると、着実な伸びを示しています。
その理由として、責任あるサプライチェーンの構築を目指すファッションブランドがオーガニックコットンを求めるようになったことが挙げられます。SDGs(持続可能な開発目標)の達成のために、企業が原料の調達や製造、販売などあらゆる局面で社会的責任を考えることが必須となり始めたのです。
出典:“Organic Cotton Market Report 2021”(Textile Exchange) ※日本語訳は引用者による
オーガニックコットンは、インド、中国、キルギスタン、トルコなど世界21カ国で栽培されており、インドが50%と圧倒的なシェアを占めています。
オーガニック認定されている農地は世界で59万ヘクタール(2020年)ですが、オーガニックに移行中(農薬の使用を中止して3年未満)の農地が5万ヘクタールあり、今後オーガニックコットンが増える見込みを示しています。
ファトレードプレミアムを活用して新しい校舎ができたグジャラート州の学校(2013年)
もう一つ、ピープルツリーが大切にしているコットンの基準があります。それは、コットンの買取価格や働く人の安全な労働環境などについてフェアトレードの基準を満たしているかどうかをチェックし認証する「フェアトレードコットン」です。
フェアトレードコットンは、買取価格に一定のプレミアム(割増金)が支払われ、産地のコミュニティの発展のために役立てられます。例えば、小学校の建物を新しくしたり、灌漑設備を整えたりすることに使われています。働く人だけでなくコミュニティ全体にメリットをもたらすことは、社会的課題を根本的に解決していくための鍵になります。
フェアトレードでは労働環境だけでなく、自然環境や生態系を守ることも重視していることから、オーガニック栽培を奨励しています。実際、2020年にフェアトレード認証されたコットンのうち6割以上がオーガニックコットンでした。
ピープルツリーはこれからも、人と環境を大切にする「オーガニック&フェアトレード」のコットンを選びます。そしてそれが他のファッションブランドをはじめ広く繊維産業全体にも波及し、「オーガニック&フェアトレード」コットンが将来あたりまえとなることを目指しています。
参考:
・Textile Exchange “Organic Cotton Market Report 2021
・Textile Exchange “Preferred Fiber Material Market Report 2020
・PESTICDE ACTION NETWORK UK “Is cotton conquering its chemical addition?”(2018)
・Environmental Justice Foundation “THE DEADLY CHEMICALS IN COTTON” (2007)
・Global Organic Textile Standard
・http://joca.gr.jp/日本オーガニックコットン協会