森とハチたちがつくる甘い贈りもの
トーストやパンケーキにかけたり、ハーブティーに入れたり……、コクのある甘さが幸せな時間をつくるハチミツ。ピープルツリーの純粋ハチミツは、エチオピアの西部にあるシャカの熱帯林で採蜜されています。雨季が来る前の4月から6月、自生するエチオピアシェフレラをはじめとした高さのある木に農家の人びとが巣筒を設置し、野生のアフリカミツバチが蜜を集めてくれるのを待ちます。そして山奥に入り、ときには野営をしながら巣筒をチェックしていきます。簡単な作業のように聞こえますが、直径50cm 前後の丸太をくり抜いてつくった大きな巣筒を7~15mの高さに設置するのは至難の業です。また、蜜が集まるかどうかはハチ次第。習性を知り、巣筒を仕掛ける場所や時期を見極めなければなりません。こうして自然と共存し、伝統的な方法で集められたハチミツは、野生的で複雑な味わいです。
古くから愛されてきたエチオピアのハチミツ
エチオピアで古くから行われていたハチミツの採集。年間4万5,000~5万トンにものぼり、アフリカ最大の生産量を誇っています。人びとにとってハチミツは、身近なもの。パンにたっぷりつけたり、タッジと呼ばれる蜂蜜酒にして楽しみます。町にはハチミツを販売する専門店や、タッジ専門の居酒屋(タッジベッド)などがあり、暮らしに根づいています。またハチミツを採集するのは、原種のコーヒーノキが自生している森。巣筒を設置するシェフレラの木は、コーヒーノキのシェードツリー(葉焼けを防ぐための木)としても役立っているのです。
小さな農家が集まって情報交換をしながら成長
ピープルツリーの純粋ハチミツは、エチオピアの生産者団体「ベザマール」から届きます。採蜜しているのはベザマールの生産者グループのひとつで、2013 年に設立された協同組合です。収入の安定と労働環境の改善、国際市場への進出などを目標に掲げて活動しています。伝統的な採蜜方法は親から子へ家族間で伝えられるだけでしたが、組合ができたことで互いの知識や技術、近代養蜂の情報などが活発に交されるようになりました。