バングラデシュ訪問記
~現地の今 Vol.1 20年以上継続する衣料産業労働者の活動支援~
グローバル・ヴィレッジが支援しているバングラデシュの3つのプロジェクトを、代表の胤森が2022年~2023年の年末年始に訪れました。
それぞれのプロジェクトの今を、3回に分けてお届けします。
バングラデシュ衣料産業労働者連盟(NGWF)の事務所を訪ねたのは、12月30日(金)の午後。金曜日はバングラデシュの週末(日本の土曜日)にあたり、企業や学校は金・土が休日です。 それでもこの日、NGWFのスタッフは全員オフィスで働いていました。翌31日に大きなイベントを控えていたからです。
NGWFは、縫製工場などで働く労働者の権利を守るため、現状の問題点と、その改善のためのさまざまな要求を訴える集会を開催しています。31日の集会は基本的な社会保障の整備と充実を求める討論会で、国会議員やILO(国際労働機関)のアジア地域代表などもゲストで登壇する重要なイベントということで、スタッフはプレゼンテーションの準備などで忙しく働いていました。
(左から)ロフィクル・イスラムさん(事務局長)、リヤド・ホサインさん、サミール・ホサインさん(法律担当)、ムニー・アクターさん
(左)メヘール・アフロス・イーティさん(コミュニケーション担当)、(右)ハッピー・アクターさん(研修プログラム担当)
1984年の発足から共同創設者/理事長としてNGWFを率いるアミルル・ハク・アミンさんに、これまでの歩みと今取り組んでいる課題についてお話をお聞きしました。
これまでの活動の成果をおしえてください。
私たちが声を挙げ続けてきたことで、60~70%の労働者が週に一日の休日がとれるようになり、90%が祝日のボーナスを受け取り、80%の女性労働者が産休をとれるようになりました。
また、ラナ・プラザ事故(2013年にビルの崩壊によって縫製工場の労働者1,100人以上が犠牲になった事故)をきっかけに、工場の建物の安全を守る協定への署名を企業に求めて改善をはかってきましたが、NGWFはここでも主要な役割を果たしました。
現在どんな課題に取り組んでいますか?
労働組合の活動に参加した労働者が不当に解雇されたり、自主退職を強いられて退職金を得られないといった不当な扱いに対して、訴訟を起こす支援をしています。現在進行中の案件も含めて1,200件の訴訟に関わり、その多くで成果を勝ち取ってきました。
しかし訴訟で勝利しても、その労働者がブラックリストに載せられて他の工場に職を求めた際に拒否されるというケースがあります。まだ構想の段階ですが、こういった労働者が次の仕事を見つけられるまでの支援として、自分たちで作業工房を経営してつなぎの仕事を提供できればと考えています。
オフィスの壁には、これまでの活動の記録写真や、訴訟案件のリストが貼り出されている
これからの課題は何ですか?
現在、縫製工場の労働者の平均賃金は月8,000タカ(約1万円)です。法定最低賃金ぎりぎりで、都市部での生活を支えるには程遠い金額です。少なくとも倍にまで引き上げる必要があり、実現に向けて要求を続けます。
また、政府が外資を呼び込むために企業を税制面で優遇する輸出加工区(EPZs)では、合法的に労働組合の活動が禁じられており、問題です。すでに8箇所のEPZsに800の工場が移転しました。移転前の工場で組合活動をしていた労働者が活動できなくなってしまうのです。
これに対抗するために、私たちは若い女性たち向けのリーダーシップ研修を行い、労働者の権利について知識を持つ労働者をもっと増やそうとしています。たとえ一部の労働者がEPZsで活動できなくなったとしても、残りの多くがEPZsの外で声を上げ続けられるようにしたいのです。
グローバル・ヴィレッジは毎年1,000ドルの支援金をNGWFに送っていますが、ここ2年は支援金が女性のリーダーシップ研修に使われましたね。
グローバル・ヴィレッジが20年以上に渡って継続的に活動を支援してくれていることに感謝しています。支援金はもちろんですが、それ以上に、私たちの活動を認め、外に伝えてくれていることが何よりの励みとなり、支援なのです。
私たちはバングラデシュのフェアトレード・パートナー団体と共に、女性のエンパワメントを目指す研修プロジェクトを実施しています。将来的にはこの研修の経験や成果を、フェアトレードの恩恵をまだ受けていないバングラデシュの衣料産業全体に広められればと願っています。
それはすばらしい。ぜひ、フェアトレード団体の仲間たちと手を携えて活動していきたいです。
労働者の現状について語るときのアミンさんは、眼光鋭いアクティビストの顔になる
最後に、日本の消費者へのメッセージをお願いします。
バングラデシュの衣料産業の労働者を代表してお答えします。
私たちはさまざまな種類の衣料品をつくっています。(欧米向けの輸出が多いものの)最近は日本向けの製品もつくられるようになりました。ですから日本の消費者のみなさんの多くは私たちがつくった服を着ているでしょう。これは嬉しいことです。
しかし、もし日本の消費者のみなさんが、つくり手の生活が良くなることに関心を向けていただければさらに嬉しく思います。
まず第一に、消費者に製品のつくり手がどのような環境でみなさんの服をつくっているかを知ってほしいと思います。
そして、バングラデシュで生産している大手ブランドに対して、消費者からプレッシャーをかけてほしいのです。なぜ労働者がひどい環境で働いているのかを問いかけてください。
第三に、バングラデシュの衣料産業労働者、特に女性労働者がきちんと権利を得られるよう支援してください。グローバル・ヴィレッジ/ピープルツリーに支援金を送ることで、バングラデシュの労働者に支援が届きます。
アミンさんのメッセージのビデオはこちら(英語)
↓↓
40年近くに渡って労働者のために最前線で闘ってきたアミンさん。
2015年には、人権擁護に功績があった人物に対して与えられるドイツの「ニュルンベルク国際人権賞」を受賞するなど、その活動は世界的にも評価されています。
(関連記事はこちら)
とはいえ、未だに30%以上の衣料産業労働者が週に一日の休みを保証されていないなど、活動の道のりはまだ続きます。
アミンさんは、事務局長のロフィクル・イスラムさんに少しずつ業務を引き継ぐなど、後進の育成にも努めています。すべての衣料産業労働者が適正な賃金や安全な労働環境を手に入れられるまで、これからもNGWFの活動を支えていかなければという思いを新たにしました。
NGWFへの継続的な支援金は、グローバル・ヴィレッジに寄せられる会費や寄付によってまかなわれています。ぜひこれからも、会員やサポーターとして活動を支えていただければ幸いです。
会員やご寄付のお申込みはこちら
それぞれのプロジェクトの今を、3回に分けてお届けします。
バングラデシュ衣料産業労働者連盟(NGWF)の事務所を訪ねたのは、12月30日(金)の午後。金曜日はバングラデシュの週末(日本の土曜日)にあたり、企業や学校は金・土が休日です。 それでもこの日、NGWFのスタッフは全員オフィスで働いていました。翌31日に大きなイベントを控えていたからです。
NGWFは、縫製工場などで働く労働者の権利を守るため、現状の問題点と、その改善のためのさまざまな要求を訴える集会を開催しています。31日の集会は基本的な社会保障の整備と充実を求める討論会で、国会議員やILO(国際労働機関)のアジア地域代表などもゲストで登壇する重要なイベントということで、スタッフはプレゼンテーションの準備などで忙しく働いていました。
(左から)ロフィクル・イスラムさん(事務局長)、リヤド・ホサインさん、サミール・ホサインさん(法律担当)、ムニー・アクターさん
(左)メヘール・アフロス・イーティさん(コミュニケーション担当)、(右)ハッピー・アクターさん(研修プログラム担当)
1984年の発足から共同創設者/理事長としてNGWFを率いるアミルル・ハク・アミンさんに、これまでの歩みと今取り組んでいる課題についてお話をお聞きしました。
これまでの活動の成果をおしえてください。
私たちが声を挙げ続けてきたことで、60~70%の労働者が週に一日の休日がとれるようになり、90%が祝日のボーナスを受け取り、80%の女性労働者が産休をとれるようになりました。
また、ラナ・プラザ事故(2013年にビルの崩壊によって縫製工場の労働者1,100人以上が犠牲になった事故)をきっかけに、工場の建物の安全を守る協定への署名を企業に求めて改善をはかってきましたが、NGWFはここでも主要な役割を果たしました。
現在どんな課題に取り組んでいますか?
労働組合の活動に参加した労働者が不当に解雇されたり、自主退職を強いられて退職金を得られないといった不当な扱いに対して、訴訟を起こす支援をしています。現在進行中の案件も含めて1,200件の訴訟に関わり、その多くで成果を勝ち取ってきました。
しかし訴訟で勝利しても、その労働者がブラックリストに載せられて他の工場に職を求めた際に拒否されるというケースがあります。まだ構想の段階ですが、こういった労働者が次の仕事を見つけられるまでの支援として、自分たちで作業工房を経営してつなぎの仕事を提供できればと考えています。
オフィスの壁には、これまでの活動の記録写真や、訴訟案件のリストが貼り出されている
これからの課題は何ですか?
現在、縫製工場の労働者の平均賃金は月8,000タカ(約1万円)です。法定最低賃金ぎりぎりで、都市部での生活を支えるには程遠い金額です。少なくとも倍にまで引き上げる必要があり、実現に向けて要求を続けます。
また、政府が外資を呼び込むために企業を税制面で優遇する輸出加工区(EPZs)では、合法的に労働組合の活動が禁じられており、問題です。すでに8箇所のEPZsに800の工場が移転しました。移転前の工場で組合活動をしていた労働者が活動できなくなってしまうのです。
これに対抗するために、私たちは若い女性たち向けのリーダーシップ研修を行い、労働者の権利について知識を持つ労働者をもっと増やそうとしています。たとえ一部の労働者がEPZsで活動できなくなったとしても、残りの多くがEPZsの外で声を上げ続けられるようにしたいのです。
グローバル・ヴィレッジは毎年1,000ドルの支援金をNGWFに送っていますが、ここ2年は支援金が女性のリーダーシップ研修に使われましたね。
グローバル・ヴィレッジが20年以上に渡って継続的に活動を支援してくれていることに感謝しています。支援金はもちろんですが、それ以上に、私たちの活動を認め、外に伝えてくれていることが何よりの励みとなり、支援なのです。
私たちはバングラデシュのフェアトレード・パートナー団体と共に、女性のエンパワメントを目指す研修プロジェクトを実施しています。将来的にはこの研修の経験や成果を、フェアトレードの恩恵をまだ受けていないバングラデシュの衣料産業全体に広められればと願っています。
それはすばらしい。ぜひ、フェアトレード団体の仲間たちと手を携えて活動していきたいです。
労働者の現状について語るときのアミンさんは、眼光鋭いアクティビストの顔になる
最後に、日本の消費者へのメッセージをお願いします。
バングラデシュの衣料産業の労働者を代表してお答えします。
私たちはさまざまな種類の衣料品をつくっています。(欧米向けの輸出が多いものの)最近は日本向けの製品もつくられるようになりました。ですから日本の消費者のみなさんの多くは私たちがつくった服を着ているでしょう。これは嬉しいことです。
しかし、もし日本の消費者のみなさんが、つくり手の生活が良くなることに関心を向けていただければさらに嬉しく思います。
まず第一に、消費者に製品のつくり手がどのような環境でみなさんの服をつくっているかを知ってほしいと思います。
そして、バングラデシュで生産している大手ブランドに対して、消費者からプレッシャーをかけてほしいのです。なぜ労働者がひどい環境で働いているのかを問いかけてください。
第三に、バングラデシュの衣料産業労働者、特に女性労働者がきちんと権利を得られるよう支援してください。グローバル・ヴィレッジ/ピープルツリーに支援金を送ることで、バングラデシュの労働者に支援が届きます。
アミンさんのメッセージのビデオはこちら(英語)
↓↓
40年近くに渡って労働者のために最前線で闘ってきたアミンさん。
2015年には、人権擁護に功績があった人物に対して与えられるドイツの「ニュルンベルク国際人権賞」を受賞するなど、その活動は世界的にも評価されています。
(関連記事はこちら)
とはいえ、未だに30%以上の衣料産業労働者が週に一日の休みを保証されていないなど、活動の道のりはまだ続きます。
アミンさんは、事務局長のロフィクル・イスラムさんに少しずつ業務を引き継ぐなど、後進の育成にも努めています。すべての衣料産業労働者が適正な賃金や安全な労働環境を手に入れられるまで、これからもNGWFの活動を支えていかなければという思いを新たにしました。
NGWFへの継続的な支援金は、グローバル・ヴィレッジに寄せられる会費や寄付によってまかなわれています。ぜひこれからも、会員やサポーターとして活動を支えていただければ幸いです。
会員やご寄付のお申込みはこちら