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記事: Time Out Tokyoコラボレーション連載「ボーダレスな人びと」第6回

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Time Out Tokyoコラボレーション連載「ボーダレスな人びと」第6回

ライフスタイルマガジン「Time Out Tokyo(タイムアウト東京)」とピープル・ツリーのコラボレーション連載、第6回目に登場するのは、国内にとどまらず海外での活躍も目覚ましい、アートディレクターでアーティストの川上シュン。アートとデザイン双方から多方面にアプローチを続ける彼のボーダレス観を聞いた。



川上シュン(アートディレクター、アーティスト)




-海外での仕事が増えているそうですね。



そうですね、今は7:3ぐらいで日本と海外ですね。厳密に言うと、6が東京、3が海外のプロジェクトで、1がアートの仕事かな。将来的には日本と海外と5:5にして、デザインとアートの仕事も半々にしていきたいと思っています。



-主にはどのような仕事をされているんですか?



アートは、ビジュアルワークを僕がつくってそれを売るという仕事。例えば、もともとできている作品を販売することもあるし、オーダーワークだったり、コミッションワークとして仕事を頼まれることもあります。デザインは、クライアントワークを基本に、ブランドデザインの仕事として、企業ロゴだったり、ファッションブランドとか食品系ブランドなどのブランディングの仕事をしています。ブランディングと言っても、基本的に僕はメディアをボーダレスに仕事をしています。WEB、グラフィック、空間演出、店舗設計、建築まで一通りをアートディレクションするんです。まずはメディアを越えないとブランディングってできないんですよ。店舗設計も必要だし、デザインしたロゴを店舗やグラフィック、印刷、WEBでどのように使われるのかを全部コントロールしないと本当の意味でのブランドデザインにならないので。メディア全体をデザインすることを念頭に置いて、仕事をするということをベースにしています。



-海外の場合は?



海外では映像とかパッケージとか、そういうデザインの仕事もするんですが、どちらかというとアートの仕事の方がボーダレスに国境を越えやすいんです。ビジュアルだから言語がいらない。カンファレンスでも言うんですが、要はビジュアルってランゲージなんです。すごくグローバルなランゲージで、かつ僕の作品は日本的要素を内包しているんです。僕自身が日本人だし、日本の文化が好きだから、自分の作品が外に出るのであれば、日本のエッセンスを何かしら入れて流通させたいと思っています。



-海外ではなく、東京にオフィスを構えた理由は?



もう出て行くという感覚はやめていいと思って。それに、日本はいろんなものが世界一なんですよ。技術もそうだし、文化も感性も。たぶんどこの国よりも優れていると思うんです。日本人ってもっと偉そうにしたらいいのにって(笑)。だから、日本にいても海外ともっとグローバルに仕事をしてもいいんじゃないかなと。ただ、ヨーロッパと日本って距離的に異常に遠いんですよ。ヨーロッパの人は、2、3時間でヨーロッパ内のほかの国に、ほぼ行けるんです。その3、4倍の飛行時間って、ヨーロッパからすると世界の果てなんですね。日本人はもう慣れているけれど、まずその距離感を理解しないと外の人とは戦えないですね。その距離を越えてまで来たいと思えるものをつくらないと。海外に行けば仕事はあるけれど、東京から何かできないかなという強い想いがあります。東京を拠点にしながらも国際的に活躍するっていうのが今の目標になっています。



-東京の魅力は何でしょう?



僕にとってのNY、ロンドン、パリへの一時的なあこがれが終わったんですね。そこから日本のよさが見えだしてきて、東京がいいって言ってるのかなと思います。もちろん若い頃は、東京だけにいてはダメです。いろんなものを吸収するために外に出て行かなくては。世界は広い方が楽しいんですよ。いろんなところに行ったがゆえに、日本のよさが見えてくるところもあって、結局、僕は東京よりおもしろいところはなかったですね。



-創造の原点が東京なんですね。



僕が東京生まれというのも大きいと思います。本当に東京が好きなんです。地元愛ってあるけれど、まさにそれです。僕のデザインとか作品は東京っぽいってよく言われるんです。僕自身、東京をベースにしていた方がアイディアが広がります。ここを出てしまったら、東京は自分の街じゃなくなるから、作品が変わってしまうもしれない。

でも、日本文化を取り入れる感覚は外国人に近いんじゃないかと思っています。ずっと海外のデザインに憧れて勉強して、物をつくってきたから、外国人が思う“日本かっこいい!”が僕の中にあるんですね。僕の日本文化の知識って、外国人の日本大好きぐらいの知識しかないと思うんです。東京に対してちょうどいいファッション感があって、それをどう表現するかっていうのをアウトプットしているので、外国人目線で日本を見て、物をつくっているんです。やっぱり外国人には東京にもっと興味を持ってもらいたい! そのためには東京をもう少しグローバル化したいなと思っています。



-どうしたらグローバル化できると思いますか?



まず、僕の周りのことから言えば、東京にいながらも、人種がミックスしたデザイン会社をつくりたいと思っています。これから何人か外国人のスタッフが入る予定です。そして、スタッフの半分ぐらいは外国人にします。日本人しかいないと日本人の感覚しかないから、海外から10時間の壁を越えてわざわざ発注はしないと思う。
僕の東京の理想像というのがあって、日本人と外国人が半々ぐらいで暮らしている感じ。日本人も英語で楽しそうにしゃべってる絵が未来の東京であってほしいと思っています。

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川上シュン Shun Kawakami
アートディレクター、アーティスト。1977年、東京・深川生まれ。artless Inc.代表。日本の伝統美と現代的感覚、古典技法とテクノロジーを組み合わせるなど、アートとデザインの境界に位置する「芸術としてのデザイン」を探求している。その領域は多岐にわたり、アート、デザイン、タイポグラフィック、インタラクティブ、ビデオ、インスタレーションなど、アートとデザイン双方から多方面へアプローチを続け、グローバルに活動中。「NY ADC: Young Gun 6」受賞(2008年)、「カンヌ国際広告祭」金賞(2010年)、「ONE SHOW DESIGN(NY)」金賞(2013年)など、国内外で多数の受賞歴を持つ。
公式サイト:http://www.artless.co.jp/

衣装協力:
ピープル・ツリー
オーガニックコットン・ボーダー・プリントTシャツ(ブルー)
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About Time Out Tokyo
タイムアウト東京は、街の探索と発見の楽しみを日本語、英語のバイリンガルで伝える“お出かけ促進メディア”。ヴニュー、イベント、特集記事、ブログなどのコンテンツをデイリーで発信しています。
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