インドの職人たちと一緒につくりあげた1枚
酷暑の夏もやっと終わり、一雨ごとに秋らしさが深まってきました。蒸し暑いのが大の苦手で、ついつい半袖のシャツやサンダルが手放せずにいましたが、さすがにそろそろ本格的に衣替えの季節です。
9月も後半になり、ピープルツリーにも肌触りの良い素材の新アイテムがたくさん届いています。
その中でも秋の装いにぴったりの「ハンドプリント起毛シリーズ」をご紹介します。
この商品を手掛けるのは、インドのコルカタにオフィスを構える生産者団体「サシャ」。
私たちがフェアトレードのものづくりを始めてから15年以上通い続けているインドの生産者グループのひとつです。
数年前にハンドペイントのユニークなアイテムを見つけ、そのプリントを手掛ける工房「サードアイ」を訪ねて以来、毎シーズンどんな手法でプリントをしたら面白いものができるか、職人さんたちと一緒に試行錯誤しながら新しい商品をつくっています。
今回もいろいろな苦労を重ねてやっと商品化することができました。
落書きもアートな工房「サードアイ」
工房のあるセランプールはサシャのオフィスがあるコルカタから車で2時間ほど、ガンジス川のほとりにある歴史ある街です。
18世紀後半に活字印刷による産業がインドで初めて本格的に始まったところで、今ではテキスタイルプリントがとても盛んな地域です。
大型のスクリーンプリントを扱う大きな工場から、ブロックプリントやハンドペイントの小さな工房まで、たくさんの職人たちが働いています。歩いていてふと民家のドアの奥を覗くと、ときおり黙々と版を押している職人さんを見かけることもあります。
向こうにみえるのはガンジス川
小さな路地の多い街並み
まずはベースとなる素材について。
秋冬シーズンに向けて起毛素材のあたたかみを感じられるシリーズを企画しましたが、ピープルツリーの生産者はほとんどが南アジアにあり、その多くが一年を通して寒い季節のない地域にあります。ましてや、この西ベンガル州は気温だけでなく湿度も高いので、欲しかったコットンネル素材を扱っているお店や問屋はなかなかありません。ないと言われてもどこかにはあるはず、方々で持参した参考生地を見せ、数シーズン越しでやっと使えそうなものを見つけることができました。
次なる挑戦はプリントです。
ブロックプリントは薄手のシルクやコットン生地に押すことがほとんどで、今回のように厚手の、しかも起毛素材の生地にプリントするのは彼らにとっても初めての挑戦でした。
今回のデザインは秋らしい濃色のグリーンベースに葉っぱのモチーフをちりばめたもの。
ハンドペイントの味わいを表現するためにローラーを使うことにしましたが、なかなか思うような色と質感にたどり着きません。
顔料をつけすぎると起毛のふんわりとしたあたたかさが失われ、のっぺりとした手触りになってしまいます。ベースの起毛を活かしつつ、ハンドペイントで陰影のある仕上がりしたいとこだわっていたので、さてどうしたものか。
試作中の生地。どうしても色が薄くなってしまいます。
悩んでいたら、工房の代表でデザイナーのパキさんから
「それなら一度生地を染めてからプリントしたらどう?」との提案。
「でも、ここには布を染める設備はないでしょう?」と私。
すると、サシャのプラディプタさんが
「できるよ!サシャの他のグループで染めた生地をここに持ってくるから大丈夫!」と。
ひとりひとりが職人としての経験をもとに、よりよいものを作るためのアイデアを持ち寄ってくれることにいつも励まされます。
ハンドペイントはただでさえ長い時間がかかるのに、さらにひと工程加えるのは正直なところ心配でした。
手仕事とはいえ、お約束しているお客さまへのお届けが遅れるわけにはいかないのですから。でも集まったみんなは、そのほうがより美しいプリントができる、納期にも間に合うと自信たっぷり。
それならということで、生地を薄いグリーンで染めて、濃いグリーンをローラーでプリントすることに決めました。
展示会に向けてのサンプル用に数メーターの生地を染めてもらい、数日後にもう一度工房を訪ねました。
やり直す時間はないのでドキドキしながらプリント再開です。コットンネルの柔らかい起毛を潰さないように、ふんわりと少しずつ色を重ねていきます。ベースのプリントが終わったら、今度は葉っぱのモチーフを木版のブロックで押していきます。
あくまでもランダムに、でも全体的に同じ印象になるように。職人たちは仕上がりをイメージしながら、次々に柄を描いていきます。
生地のプリントが終わったら、スチーミングという工程に入ります。
顔料プリントは熱を加えることで色の定着が安定するので、欠かせない工程です。
スチーミングで色が変化することがあるので、プリントの色はそのブレを予測しておかなければなりません。大きな蒸し器にかけて数時間、やっと生地ができました。
大きな蒸し器。でもいちどに入るのはたったの数m分
色を予測するのは長い経験が必要。
思い通りのイメージにできた!と安心したのも束の間、本生産でもひと苦労ありました。
経験を持った彼らにとっても今回のプリントは初めての挑戦だったので、色が合わなかったり、起毛がつぶれてしまったりして何度もやり直したため、途中で生地がなくなってしまうというハプニングもありました
時間をかけて仕上げられる生地をどんどん縫製グループに届けます。
しかしここでもまたひと苦労。生地の場所によって微妙な濃淡があるので、裁断したパーツの色が合うように注意して一着ごとに組み合わせなければなりませんでした。
それぞれ少しずつ色の深さが違うのはプリントの味わいですが、袖と身頃が違う色というのは困りますから。サシャのフィールドワーカーがそのたびに何度も縫製グループを訪ね、職人たちと一緒に確認をしてくれましたが、その作業には大変な時間がかかりました。
私も急遽スケジュールを調整して再びインドへ。
指示通りにできているか、大きな問題がないか、サシャのスタッフと一緒に確認して、満足いく品質の製品を送り出すことができました。
サシャの倉庫ですべての商品をもう一度チェック
ピープルツリーの手しごとには、たくさんの人たちの努力とものをつくる喜びが詰まっています。
生地の色あいやリーフのプリントひとつひとつに、それを施した職人の手仕事の跡を感じられる、そんなつくり手の思いが詰まった1枚がひとりでも多くのみなさまに届きますように。
ハンドプリント起毛シリーズはこちら >
秋冬の新作はこちら >
9月も後半になり、ピープルツリーにも肌触りの良い素材の新アイテムがたくさん届いています。
その中でも秋の装いにぴったりの「ハンドプリント起毛シリーズ」をご紹介します。
この商品を手掛けるのは、インドのコルカタにオフィスを構える生産者団体「サシャ」。
私たちがフェアトレードのものづくりを始めてから15年以上通い続けているインドの生産者グループのひとつです。
数年前にハンドペイントのユニークなアイテムを見つけ、そのプリントを手掛ける工房「サードアイ」を訪ねて以来、毎シーズンどんな手法でプリントをしたら面白いものができるか、職人さんたちと一緒に試行錯誤しながら新しい商品をつくっています。
今回もいろいろな苦労を重ねてやっと商品化することができました。
落書きもアートな工房「サードアイ」
工房のあるセランプールはサシャのオフィスがあるコルカタから車で2時間ほど、ガンジス川のほとりにある歴史ある街です。
18世紀後半に活字印刷による産業がインドで初めて本格的に始まったところで、今ではテキスタイルプリントがとても盛んな地域です。
大型のスクリーンプリントを扱う大きな工場から、ブロックプリントやハンドペイントの小さな工房まで、たくさんの職人たちが働いています。歩いていてふと民家のドアの奥を覗くと、ときおり黙々と版を押している職人さんを見かけることもあります。
向こうにみえるのはガンジス川
小さな路地の多い街並み
まずはベースとなる素材について。
秋冬シーズンに向けて起毛素材のあたたかみを感じられるシリーズを企画しましたが、ピープルツリーの生産者はほとんどが南アジアにあり、その多くが一年を通して寒い季節のない地域にあります。ましてや、この西ベンガル州は気温だけでなく湿度も高いので、欲しかったコットンネル素材を扱っているお店や問屋はなかなかありません。ないと言われてもどこかにはあるはず、方々で持参した参考生地を見せ、数シーズン越しでやっと使えそうなものを見つけることができました。
次なる挑戦はプリントです。
ブロックプリントは薄手のシルクやコットン生地に押すことがほとんどで、今回のように厚手の、しかも起毛素材の生地にプリントするのは彼らにとっても初めての挑戦でした。
今回のデザインは秋らしい濃色のグリーンベースに葉っぱのモチーフをちりばめたもの。
ハンドペイントの味わいを表現するためにローラーを使うことにしましたが、なかなか思うような色と質感にたどり着きません。
顔料をつけすぎると起毛のふんわりとしたあたたかさが失われ、のっぺりとした手触りになってしまいます。ベースの起毛を活かしつつ、ハンドペイントで陰影のある仕上がりしたいとこだわっていたので、さてどうしたものか。
試作中の生地。どうしても色が薄くなってしまいます。
悩んでいたら、工房の代表でデザイナーのパキさんから
「それなら一度生地を染めてからプリントしたらどう?」との提案。
「でも、ここには布を染める設備はないでしょう?」と私。
すると、サシャのプラディプタさんが
「できるよ!サシャの他のグループで染めた生地をここに持ってくるから大丈夫!」と。
ひとりひとりが職人としての経験をもとに、よりよいものを作るためのアイデアを持ち寄ってくれることにいつも励まされます。
ハンドペイントはただでさえ長い時間がかかるのに、さらにひと工程加えるのは正直なところ心配でした。
手仕事とはいえ、お約束しているお客さまへのお届けが遅れるわけにはいかないのですから。でも集まったみんなは、そのほうがより美しいプリントができる、納期にも間に合うと自信たっぷり。
それならということで、生地を薄いグリーンで染めて、濃いグリーンをローラーでプリントすることに決めました。
展示会に向けてのサンプル用に数メーターの生地を染めてもらい、数日後にもう一度工房を訪ねました。
やり直す時間はないのでドキドキしながらプリント再開です。コットンネルの柔らかい起毛を潰さないように、ふんわりと少しずつ色を重ねていきます。ベースのプリントが終わったら、今度は葉っぱのモチーフを木版のブロックで押していきます。
あくまでもランダムに、でも全体的に同じ印象になるように。職人たちは仕上がりをイメージしながら、次々に柄を描いていきます。
生地のプリントが終わったら、スチーミングという工程に入ります。
顔料プリントは熱を加えることで色の定着が安定するので、欠かせない工程です。
スチーミングで色が変化することがあるので、プリントの色はそのブレを予測しておかなければなりません。大きな蒸し器にかけて数時間、やっと生地ができました。
大きな蒸し器。でもいちどに入るのはたったの数m分
色を予測するのは長い経験が必要。
思い通りのイメージにできた!と安心したのも束の間、本生産でもひと苦労ありました。
経験を持った彼らにとっても今回のプリントは初めての挑戦だったので、色が合わなかったり、起毛がつぶれてしまったりして何度もやり直したため、途中で生地がなくなってしまうというハプニングもありました
時間をかけて仕上げられる生地をどんどん縫製グループに届けます。
しかしここでもまたひと苦労。生地の場所によって微妙な濃淡があるので、裁断したパーツの色が合うように注意して一着ごとに組み合わせなければなりませんでした。
それぞれ少しずつ色の深さが違うのはプリントの味わいですが、袖と身頃が違う色というのは困りますから。サシャのフィールドワーカーがそのたびに何度も縫製グループを訪ね、職人たちと一緒に確認をしてくれましたが、その作業には大変な時間がかかりました。
私も急遽スケジュールを調整して再びインドへ。
指示通りにできているか、大きな問題がないか、サシャのスタッフと一緒に確認して、満足いく品質の製品を送り出すことができました。
サシャの倉庫ですべての商品をもう一度チェック
ピープルツリーの手しごとには、たくさんの人たちの努力とものをつくる喜びが詰まっています。
生地の色あいやリーフのプリントひとつひとつに、それを施した職人の手仕事の跡を感じられる、そんなつくり手の思いが詰まった1枚がひとりでも多くのみなさまに届きますように。
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