活気づくフェアトレードタウン運動
5月は「フェアトレード月間」
5月第二土曜は、世界中のフェアトレード団体が一斉にフェアトレードをアピールする「世界フェアトレード・ デー」。この日を中心に5月を「フェアトレード月間」として、日本各地でフェアトレードをテーマにしたイベントが開催されます。
中でも盛り上がりを見せているのは、フェアトレードをまちぐるみで応援する「フェアトレードタウン」運動が盛んな地域。
例えば名古屋市では、5月12日(土)にコーヒー・サミットや音楽パフォーマンス、フェアトレード・マルシェなど一日楽しめる多彩なイベントが開催されます。
神奈川県逗子市では、5月12日(土)のフェアトレード・ゼミの開催のほか、5月中に市内の公共施設4カ所でフェアトレードやフェアトレードタウンの活動を紹介するパネル展示の巡回展が。静岡県浜松市では5月19日(土)20日(日)の2日間に渡り、フェアトレードの映像上映やアラブ・アフリカの音楽演奏、フェアトレードクイズなどの催しがあります。
名古屋市、逗子市、浜松市はいずれも「フェアトレードタウン」に認定されており、活動の中核となるフェアトレード推進組織が、地元の行政や企業・商店、他の市民団体などと連携してこういったイベントを開催しているのです。
小さな町から始まったフェアトレードタウン
フェアトレードタウンの起こりは2000年、イギリスの地方都市ガースタングの市民グループが、フェアトレードを広めるために町の議員や学校・教会のリーダー、商店主などを招待して食事会を開き、それぞれの組織内でフェアトレード産品と地元産品を買い支えるよう賛同を求めたことに始まります。この提案に賛同した各分野のトップ達がガースタングを「フェアトレードタウン」と名乗ることを宣言し、これをモデルとして基準や認証制度がつくられたことであっという間にイギリス全土からヨーロッパ各国にも運動が広まりました。以来、30カ国で2,000以上のフェアトレードタウンが生まれています。
フェアトレードタウンの基準や認定方法は各国の事情に応じてそれぞれの国で決められていますが、1)地域にフェアトレードタウンの推進組織が設立される、2)フェアトレードを広めるイベントが盛んに行われてメディアで報道される、3)地元の企業や学校等の組織内でフェアトレード産品が利用される、4)フェアトレード産品を販売する商店が人口当たり一定数以上ある、5)議会がフェアトレード支持を表明する、という5つの基準は共通して採用されており、各国の経験や課題を共有しさらに運動を盛り上げるため、毎年国際会議が開催されています。
写真出典: www.fairtradetowns.org
日本独自の基準
日本では、フェアトレードタウンの基準作りや認定を担う一般社団法人「フェアトレードタウン・ジャパン」(現在は「日本フェアトレード・フォーラム」に改名)が2011年に設立され、同年6月に熊本市を日本初・アジア初のフェアトレードタウンに認定。以降、名古屋市(2015年)、逗子市(2016年)、浜松市(2017年)が続き、4都市がフェアトレードタウンになっています。また2018年2月には、浜松市の静岡文化芸術大学が初めての「フェアトレード大学」となりました。
逗子市の認定式(2017年8月)では、認定証を(写真左から)逗子市長、逗子フェアトレードタウンの会代表、逗子市議の3名が受け取り、3者の協力で認定が実現したことをアピール。右は日本フェアトレード・フォーラム代表
日本のフェアトレードタウンの特徴は、前述の5つの基準のほかもうひとつ「地域活性化への貢献」という基準が加えられたことです。フェアトレードタウンの運動がフェアトレードの普及・啓発に留まらず、地産地消やまちづくり、環境活動、障がい者支援等のコミュニティ活動と連携して地域経済や社会の活力を増すことを目指しています。高齢化や地方の過疎化といった日本社会の課題に取り組むことと、途上国の生産者を支援することを同時に目指してこそ、すべての人が生き生きと暮らせる社会が実現するという思いが込められています。
日本のフェアトレードタウン6つの基準はこちら
また、一口に「フェアトレード産品」といっても、日本ではイギリスのように、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International、略称FI)が定める認証ラベルがついた食品類がどこのスーパーマーケットでも買えるほど普及していません。一方で、世界フェアトレード機関(WFTO)の加盟団体が扱う衣料品や食品、あるいは国際協力団体などが扱う途上国の手工芸品などがフェアトレードショップなどで販売されています。そこで日本の基準では、「フェアトレード産品」としてFIの認証ラベルのある産品のほか、WFTOやその他の団体が扱っているフェアトレード産品も含めています。
フェアトレードタウンになる意味
フェアトレードタウンになることにどんな意味があるの?
と、素朴な疑問を持つ方もいるかもしれません。
フェアトレードの普及を目指してさまざまは啓発イベントを企画・実施することにとどまらず、認定を受けるとなればフェアトレード産品の販売場所の調査や自治体への働きかけ、書類の作成などが必要になります。フェアトレードタウンと認定されることはそれだけの価値があるのでしょうか。
2016年に人口230万人の大都市である名古屋市を日本で2番目のフェアトレードタウンに導いた「フェアトレード名古屋ネットワーク」代表の原田さとみさんは、活動の意義をこう語っています。
「フェアトレードタウン運動は、世界に思いを馳せて、世界の問題を知り解決を目指すと同時に、世界とつながっている私たち自身の暮らしを見つめ直し、私たちの地域の課題に気づき、地域で動き、地域の絆を深め、交流の促進や街のにぎわいの創出につなげることでもあります!
まちづくり、環境、社会貢献などのNPO、企業、大学、高校、教育関係、行政などなど、みんなで繋がって、一緒に盛り上げていくのがタウン運動です。繋がっていく、その過程がとても大事で尊いことです。
名古屋では、『地球とのフェアトレード』の理念でフェアトレードを広げています。
「世界」に対しても「地域」に対しても、「地球」に対してもフェアに!との思いから、本来は途上国に対しての貧困削減・国際協力である「フェアトレード」という言葉を、私たちは、自分たちの足元にある地域の問題解決にもつなげ、地域に根ざして、地産地消・地域活性化、国内・地域内での立場の弱い方々への仕事の創出など、地域貢献としてフェア(公正)であることとして使っています。
さらには、地球からいただいている自然の恵みである、水・空気・土などに対しても、謙虚に正しく享受し、未来に美しい地球を残せるような、フェアな使い方で暮らしているのかを今一度問うために、「地球とのフェアトレード」=「エシカル」な理念で、フェアトレードを推進しています。
この理念があるので、名古屋市役所はオール名古屋で協力してくれています」
フェアトレードタウンの認証を受けることは、理想とする社会に向かってさまざまな人が手を携え、目標を定めて前に進んでいく先にある一里塚のようなものです。フェアトレードタウンになるまちは、世界と地域の問題を解決するために、地元の人々が自ら考え行動する力をもっているまち、ということを意味します。
そんなまちづくりを目指して、フェアトレードタウンを目指す運動が各地に広まっています。
町村で最初の認定を目指す岐阜県垂井町では、フェアトレード月間に先駆けて4月29日に「第8回フェアトレードデイ垂井」を開催。関東や四国など遠方からも参加者が集まり、町長がフェアトレードタウン化に向けた意気込みを語りました。
札幌市では、2003年に地元のフェアトレードショップが中心となって開催した「さっぽろフェアトレードフェスタ」が、今や市内中心地の大通公園で毎年6月~7月に開催される恒例の大規模イベントになっています。
5月を中心に各地で盛り上がるフェアトレードのイベント、ぜひ足を伸ばして「フェアトレードを広めたい」という共通の想いを持つ仲間と出会い、次の一歩を踏み出すヒントを得ませんか?
フェアトレードタウンの本が出版されました
熊本、名古屋、逗子、浜松の4都市を始めフェアトレードタウン運動が活発な7地域の代表が、活動の経験をつづりました。編者である日本フェアトレード・フォーラム理事の渡辺龍也・東京経済大学教授がフェアトレードタウンの歴史や現状を解説。世界初のフェアトレードタウン・ガースタングのブルース・クラウザー氏からの寄稿もあり、フェアトレードタウンのすべてがわかる入門書となっています。
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熊本を応援しよう!
日本のフェアトレードタウン運動を牽引し2011年に日本初・アジア初のフェアトレードタウンとなった熊本市では、2016年4月の大地震により「フェアトレードシティくまもと推進委員会」の事務局を務めるフェアトレードショップ「ラブランド」が全壊し、活動がストップしました。同年6月にフェアトレードタウン認定の更新申請を予定していましたが延期し、少しずつ組織の立て直しと事務局建物の復旧が進んでいました。
しかし、復旧が軌道に乗り始めた2018年1月、ラブランドは再び火災による全焼という被害に遭いました。現在、有志が結成した「明石祥子さん(ラブランド代表)を応援する会」が、支援の寄付を呼び掛けています。事務局業務も少しずつ手分けし、延期されているフェアトレードタウン認定の更新申請も目指しています。
全国のフェアトレードの仲間からも支援をお願いします。
5月第二土曜は、世界中のフェアトレード団体が一斉にフェアトレードをアピールする「世界フェアトレード・ デー」。この日を中心に5月を「フェアトレード月間」として、日本各地でフェアトレードをテーマにしたイベントが開催されます。
中でも盛り上がりを見せているのは、フェアトレードをまちぐるみで応援する「フェアトレードタウン」運動が盛んな地域。
例えば名古屋市では、5月12日(土)にコーヒー・サミットや音楽パフォーマンス、フェアトレード・マルシェなど一日楽しめる多彩なイベントが開催されます。
神奈川県逗子市では、5月12日(土)のフェアトレード・ゼミの開催のほか、5月中に市内の公共施設4カ所でフェアトレードやフェアトレードタウンの活動を紹介するパネル展示の巡回展が。静岡県浜松市では5月19日(土)20日(日)の2日間に渡り、フェアトレードの映像上映やアラブ・アフリカの音楽演奏、フェアトレードクイズなどの催しがあります。
名古屋市、逗子市、浜松市はいずれも「フェアトレードタウン」に認定されており、活動の中核となるフェアトレード推進組織が、地元の行政や企業・商店、他の市民団体などと連携してこういったイベントを開催しているのです。
小さな町から始まったフェアトレードタウン
フェアトレードタウンの起こりは2000年、イギリスの地方都市ガースタングの市民グループが、フェアトレードを広めるために町の議員や学校・教会のリーダー、商店主などを招待して食事会を開き、それぞれの組織内でフェアトレード産品と地元産品を買い支えるよう賛同を求めたことに始まります。この提案に賛同した各分野のトップ達がガースタングを「フェアトレードタウン」と名乗ることを宣言し、これをモデルとして基準や認証制度がつくられたことであっという間にイギリス全土からヨーロッパ各国にも運動が広まりました。以来、30カ国で2,000以上のフェアトレードタウンが生まれています。
フェアトレードタウンの基準や認定方法は各国の事情に応じてそれぞれの国で決められていますが、1)地域にフェアトレードタウンの推進組織が設立される、2)フェアトレードを広めるイベントが盛んに行われてメディアで報道される、3)地元の企業や学校等の組織内でフェアトレード産品が利用される、4)フェアトレード産品を販売する商店が人口当たり一定数以上ある、5)議会がフェアトレード支持を表明する、という5つの基準は共通して採用されており、各国の経験や課題を共有しさらに運動を盛り上げるため、毎年国際会議が開催されています。
写真出典: www.fairtradetowns.org
日本独自の基準
日本では、フェアトレードタウンの基準作りや認定を担う一般社団法人「フェアトレードタウン・ジャパン」(現在は「日本フェアトレード・フォーラム」に改名)が2011年に設立され、同年6月に熊本市を日本初・アジア初のフェアトレードタウンに認定。以降、名古屋市(2015年)、逗子市(2016年)、浜松市(2017年)が続き、4都市がフェアトレードタウンになっています。また2018年2月には、浜松市の静岡文化芸術大学が初めての「フェアトレード大学」となりました。
逗子市の認定式(2017年8月)では、認定証を(写真左から)逗子市長、逗子フェアトレードタウンの会代表、逗子市議の3名が受け取り、3者の協力で認定が実現したことをアピール。右は日本フェアトレード・フォーラム代表
日本のフェアトレードタウンの特徴は、前述の5つの基準のほかもうひとつ「地域活性化への貢献」という基準が加えられたことです。フェアトレードタウンの運動がフェアトレードの普及・啓発に留まらず、地産地消やまちづくり、環境活動、障がい者支援等のコミュニティ活動と連携して地域経済や社会の活力を増すことを目指しています。高齢化や地方の過疎化といった日本社会の課題に取り組むことと、途上国の生産者を支援することを同時に目指してこそ、すべての人が生き生きと暮らせる社会が実現するという思いが込められています。
日本のフェアトレードタウン6つの基準はこちら
また、一口に「フェアトレード産品」といっても、日本ではイギリスのように、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International、略称FI)が定める認証ラベルがついた食品類がどこのスーパーマーケットでも買えるほど普及していません。一方で、世界フェアトレード機関(WFTO)の加盟団体が扱う衣料品や食品、あるいは国際協力団体などが扱う途上国の手工芸品などがフェアトレードショップなどで販売されています。そこで日本の基準では、「フェアトレード産品」としてFIの認証ラベルのある産品のほか、WFTOやその他の団体が扱っているフェアトレード産品も含めています。
フェアトレードタウンになる意味
フェアトレードタウンになることにどんな意味があるの?
と、素朴な疑問を持つ方もいるかもしれません。
フェアトレードの普及を目指してさまざまは啓発イベントを企画・実施することにとどまらず、認定を受けるとなればフェアトレード産品の販売場所の調査や自治体への働きかけ、書類の作成などが必要になります。フェアトレードタウンと認定されることはそれだけの価値があるのでしょうか。
2016年に人口230万人の大都市である名古屋市を日本で2番目のフェアトレードタウンに導いた「フェアトレード名古屋ネットワーク」代表の原田さとみさんは、活動の意義をこう語っています。
「フェアトレードタウン運動は、世界に思いを馳せて、世界の問題を知り解決を目指すと同時に、世界とつながっている私たち自身の暮らしを見つめ直し、私たちの地域の課題に気づき、地域で動き、地域の絆を深め、交流の促進や街のにぎわいの創出につなげることでもあります!
まちづくり、環境、社会貢献などのNPO、企業、大学、高校、教育関係、行政などなど、みんなで繋がって、一緒に盛り上げていくのがタウン運動です。繋がっていく、その過程がとても大事で尊いことです。
名古屋では、『地球とのフェアトレード』の理念でフェアトレードを広げています。
「世界」に対しても「地域」に対しても、「地球」に対してもフェアに!との思いから、本来は途上国に対しての貧困削減・国際協力である「フェアトレード」という言葉を、私たちは、自分たちの足元にある地域の問題解決にもつなげ、地域に根ざして、地産地消・地域活性化、国内・地域内での立場の弱い方々への仕事の創出など、地域貢献としてフェア(公正)であることとして使っています。
さらには、地球からいただいている自然の恵みである、水・空気・土などに対しても、謙虚に正しく享受し、未来に美しい地球を残せるような、フェアな使い方で暮らしているのかを今一度問うために、「地球とのフェアトレード」=「エシカル」な理念で、フェアトレードを推進しています。
この理念があるので、名古屋市役所はオール名古屋で協力してくれています」
フェアトレードタウンの認証を受けることは、理想とする社会に向かってさまざまな人が手を携え、目標を定めて前に進んでいく先にある一里塚のようなものです。フェアトレードタウンになるまちは、世界と地域の問題を解決するために、地元の人々が自ら考え行動する力をもっているまち、ということを意味します。
そんなまちづくりを目指して、フェアトレードタウンを目指す運動が各地に広まっています。
町村で最初の認定を目指す岐阜県垂井町では、フェアトレード月間に先駆けて4月29日に「第8回フェアトレードデイ垂井」を開催。関東や四国など遠方からも参加者が集まり、町長がフェアトレードタウン化に向けた意気込みを語りました。
札幌市では、2003年に地元のフェアトレードショップが中心となって開催した「さっぽろフェアトレードフェスタ」が、今や市内中心地の大通公園で毎年6月~7月に開催される恒例の大規模イベントになっています。
5月を中心に各地で盛り上がるフェアトレードのイベント、ぜひ足を伸ばして「フェアトレードを広めたい」という共通の想いを持つ仲間と出会い、次の一歩を踏み出すヒントを得ませんか?
フェアトレードタウンの本が出版されました
熊本、名古屋、逗子、浜松の4都市を始めフェアトレードタウン運動が活発な7地域の代表が、活動の経験をつづりました。編者である日本フェアトレード・フォーラム理事の渡辺龍也・東京経済大学教授がフェアトレードタウンの歴史や現状を解説。世界初のフェアトレードタウン・ガースタングのブルース・クラウザー氏からの寄稿もあり、フェアトレードタウンのすべてがわかる入門書となっています。
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熊本を応援しよう!
日本のフェアトレードタウン運動を牽引し2011年に日本初・アジア初のフェアトレードタウンとなった熊本市では、2016年4月の大地震により「フェアトレードシティくまもと推進委員会」の事務局を務めるフェアトレードショップ「ラブランド」が全壊し、活動がストップしました。同年6月にフェアトレードタウン認定の更新申請を予定していましたが延期し、少しずつ組織の立て直しと事務局建物の復旧が進んでいました。
しかし、復旧が軌道に乗り始めた2018年1月、ラブランドは再び火災による全焼という被害に遭いました。現在、有志が結成した「明石祥子さん(ラブランド代表)を応援する会」が、支援の寄付を呼び掛けています。事務局業務も少しずつ手分けし、延期されているフェアトレードタウン認定の更新申請も目指しています。
全国のフェアトレードの仲間からも支援をお願いします。