3月8日は「国際女性デー」
毎年3月8日は「国際女性デー」。
1904年のニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源で、1975年、国連によって記念日として制定されました。
今年のテーマは、「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」です。
このテーマはまさに、フェアトレードがこれまで実践しさらに達成しようとしてきたことに他なりません。
女性が活躍するフェアトレード
社会的・経済的に立場の弱い人々の生活を支援するフェアトレードでは、文化的・社会的な習慣により収入の機会を持たなかった女性が仕事を得て、自立を目指すケースが多くあります。
WFTO(世界フェアトレード連盟)の加盟団体で生産に携わる96万人のうち74%を女性が占め、団体の創設者や管理職レベルも半数以上が女性と、フェアトレードは女性の活躍がとても進んでいます。
WFTOに加盟するフェアトレード団体の52%は、CEO(最高責任者)が女性
ピープルツリーの生産者パートナー団体で、フェアトレードの先駆者的存在であるインドの「サシャ」は、1978年に故シャビィ・コーリさんが、社会の底辺にあった女性たちが収入を得て自立できるようにと、手工芸品や衣料品の職人グループを支援する組織として設立しました。現在約100にのぼる生産者グループで働く職人5,000人余りの大半が女性で、サシャでトレーニングを受けて技術を身につけ、起業して自分のグループをつくった人もいます。
コーリさんの後を継いでサシャを率いるルーパ・メタさんは現在、WFTOの理事長も務めています。
(左)サシャの創設者、故シャビィ・コーリさん/(中)サシャの刺繍グループの女性たち/(右)サシャの現代表でWFTOの理事長ルーパ・メタさん
ネパールの生産者パートナー「ACP(手工芸生産者連盟)」では、フェルト製品などの手工芸品をつくる職人約1,000人の9割が女性です。創設者で現代表を務めるミーラ・バタライさんはネパールのフェアトレード団体ネットワークである「フェアトレード・グループ・ネパール」の設立を主導し、2004年にはスイスのシュワブ財団により、ピープルツリー共同創設者のサフィア・ミニーと共に「世界で最も傑出した社会起業家」のひとりに選ばれました。
(左)ACPの工房で働く女性たち/(右)ACP代表のミーラ・バタライさんとグローバル・ヴィレッジ代表・胤森。2016年、タイで行われたWFTO国際会議にて
バングラデシュの生産者パートナーで、手織りの衣料品を届けてくれる「タナパラ・スワローズ」も、織り・縫製・刺繍、品質管理などの部門で働く200名以上のほとんどが女性です。タナパラ・スワローズは、1971年の独立戦争で村の男性が全員殺され、残された女性たちが生計を立てられるよう支援するために設立されました。はた織り作業は力が必要なため伝統的に男性の仕事とされていますが、女性たちが技術を習得し、手織り生地の衣料品やバッグなどをつくっています。
タナパラ・スワローズのはた織り職人
持続可能な発展のために
WFTOではさらに女性の地位向上をはかるために、2016年にジェンダー政策を取り入れました。「貧困や飢餓をなくし持続可能な発展を実現させるためには、女性と男性のエンパワメントが不可欠である」という考え方に基づくものです。
このジェンダー政策により、WFTOに加盟するメンバー団体はそれぞれ、自組織内で男女平等を確立する指針を提出することが義務づけられました。
ピープルツリーのようにフェアトレード商品の輸入・販売を行うマーケティング団体も、サシャやACP、タナパラ・スワローズのように生産国で職人や労働者を支援する団体も、女性が意思決定に参画し組織の中で指導力を発揮できるよう努力を続けています。
WFTOでは、国際会議や地域会合の場でジェンダーについてのワークショップを行ったり、メンバー団体が行っている事例を紹介するなどして他のメンバーの学びにしています。例えば、ジェンダーに関するセミナーの開催や、グループ討議やロールプレイングを通じての啓発などです。
既に女性の地位向上にかなり成功しているフェアトレード団体であっても、なぜこのような一層の改善努力が必要なのか、サシャのディレクターであるスジャータ・ゴスワニさんはこう説明します。
「男女間の不平等は根深く、様々な形で女性差別に表れています。組織レベルでも現場の生産者パートナーとの仕事においてもバランスのとれた環境を達成するために、たゆまぬ努力と良心が必要なのです」
バングラデシュの女性をクラウドファンディングで応援
バングラデシュのフェアトレード団体のネットワークである「ECOTA」では、ジェンダー政策の一環として、今年6月からの実施を目指して女性のエンパワメントを目指す研修プログラムを企画しています。ECOTAに加盟する36団体で商品づくりに携わる職人は12万人、うち8割が女性ですが、管理職レベルで能力を発揮している女性はまだ多くありません。
バングラデシュ「ジュート・ワークス」で作業する女性たち
このプログラムでは、まず今年中に5団体で50名の教育係を育成し、性差別のない職場、女性がリーダーシップを発揮できる環境作りを目指します。また、研修マニュアルやノウハウをECOTA内の他の団体、ひいては広くバングラデシュの衣料品・手工芸品産業全体で活用するよう働きかけていきます。
バングラデシュは世界第2位の衣料品輸出国で、衣料品関連の工場は7,000、働く人の数は500万人と言われておりその多くが18~30歳の若い女性です。彼女たちの立場は弱く、週一日の休みもなく工場長から暴言を受けながら働かされていたり、コロナ禍で仕事が減り補償もなく解雇されたりしています。フェアトレードが先導する女性のエンパワメントが、こういったフェアトレード団体に属さない女性たちを弱い立場から救い出す力になっていくかもしれません。
労働条件の改善を求めてデモをするバングラデシュの衣料品産業で働く女性たち。2019年
このプロジェクトの企画にあたり、国際的な開発NGO「クリスチャン・エイド」がプランニングを一緒に行い資金の3分の2を提供することになりました。
グローバル・ヴィレッジ/ピープルツリーはイギリスの「ピープルツリー・ファンデーション」と共にこのプロジェクトを応援し、残りの費用をまかなえるよう、クラウドファンディングで120万円の資金を集めることにしました。
国際女性デーの本日、クラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」でスタートします。バングラデシュの女性たちを応援するため、ぜひご協力をお願いします。
READYFORのプロジェクトページはこちら
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グローバル・ヴィレッジについて
グローバル・ヴィレッジは、イベントやキャンペーンを通じて貿易や消費社会の問題点を伝え、途上国の立場の弱い人々の自立を支援 するフェアトレードの普及・促進を行うと共に、生産国の教育・環境プロジェクトの支援を通じて生産者をサポートしています。
こういった活動を安定して継続的に行うため、会員となって活動を支えてくださる方を募集しています。詳しくは、こちら。
1904年のニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源で、1975年、国連によって記念日として制定されました。
今年のテーマは、「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」です。
このテーマはまさに、フェアトレードがこれまで実践しさらに達成しようとしてきたことに他なりません。
女性が活躍するフェアトレード
社会的・経済的に立場の弱い人々の生活を支援するフェアトレードでは、文化的・社会的な習慣により収入の機会を持たなかった女性が仕事を得て、自立を目指すケースが多くあります。
WFTO(世界フェアトレード連盟)の加盟団体で生産に携わる96万人のうち74%を女性が占め、団体の創設者や管理職レベルも半数以上が女性と、フェアトレードは女性の活躍がとても進んでいます。
WFTOに加盟するフェアトレード団体の52%は、CEO(最高責任者)が女性
ピープルツリーの生産者パートナー団体で、フェアトレードの先駆者的存在であるインドの「サシャ」は、1978年に故シャビィ・コーリさんが、社会の底辺にあった女性たちが収入を得て自立できるようにと、手工芸品や衣料品の職人グループを支援する組織として設立しました。現在約100にのぼる生産者グループで働く職人5,000人余りの大半が女性で、サシャでトレーニングを受けて技術を身につけ、起業して自分のグループをつくった人もいます。
コーリさんの後を継いでサシャを率いるルーパ・メタさんは現在、WFTOの理事長も務めています。
(左)サシャの創設者、故シャビィ・コーリさん/(中)サシャの刺繍グループの女性たち/(右)サシャの現代表でWFTOの理事長ルーパ・メタさん
ネパールの生産者パートナー「ACP(手工芸生産者連盟)」では、フェルト製品などの手工芸品をつくる職人約1,000人の9割が女性です。創設者で現代表を務めるミーラ・バタライさんはネパールのフェアトレード団体ネットワークである「フェアトレード・グループ・ネパール」の設立を主導し、2004年にはスイスのシュワブ財団により、ピープルツリー共同創設者のサフィア・ミニーと共に「世界で最も傑出した社会起業家」のひとりに選ばれました。
(左)ACPの工房で働く女性たち/(右)ACP代表のミーラ・バタライさんとグローバル・ヴィレッジ代表・胤森。2016年、タイで行われたWFTO国際会議にて
バングラデシュの生産者パートナーで、手織りの衣料品を届けてくれる「タナパラ・スワローズ」も、織り・縫製・刺繍、品質管理などの部門で働く200名以上のほとんどが女性です。タナパラ・スワローズは、1971年の独立戦争で村の男性が全員殺され、残された女性たちが生計を立てられるよう支援するために設立されました。はた織り作業は力が必要なため伝統的に男性の仕事とされていますが、女性たちが技術を習得し、手織り生地の衣料品やバッグなどをつくっています。
タナパラ・スワローズのはた織り職人
持続可能な発展のために
WFTOではさらに女性の地位向上をはかるために、2016年にジェンダー政策を取り入れました。「貧困や飢餓をなくし持続可能な発展を実現させるためには、女性と男性のエンパワメントが不可欠である」という考え方に基づくものです。
このジェンダー政策により、WFTOに加盟するメンバー団体はそれぞれ、自組織内で男女平等を確立する指針を提出することが義務づけられました。
ピープルツリーのようにフェアトレード商品の輸入・販売を行うマーケティング団体も、サシャやACP、タナパラ・スワローズのように生産国で職人や労働者を支援する団体も、女性が意思決定に参画し組織の中で指導力を発揮できるよう努力を続けています。
WFTOでは、国際会議や地域会合の場でジェンダーについてのワークショップを行ったり、メンバー団体が行っている事例を紹介するなどして他のメンバーの学びにしています。例えば、ジェンダーに関するセミナーの開催や、グループ討議やロールプレイングを通じての啓発などです。
既に女性の地位向上にかなり成功しているフェアトレード団体であっても、なぜこのような一層の改善努力が必要なのか、サシャのディレクターであるスジャータ・ゴスワニさんはこう説明します。
「男女間の不平等は根深く、様々な形で女性差別に表れています。組織レベルでも現場の生産者パートナーとの仕事においてもバランスのとれた環境を達成するために、たゆまぬ努力と良心が必要なのです」
バングラデシュの女性をクラウドファンディングで応援
バングラデシュのフェアトレード団体のネットワークである「ECOTA」では、ジェンダー政策の一環として、今年6月からの実施を目指して女性のエンパワメントを目指す研修プログラムを企画しています。ECOTAに加盟する36団体で商品づくりに携わる職人は12万人、うち8割が女性ですが、管理職レベルで能力を発揮している女性はまだ多くありません。
バングラデシュ「ジュート・ワークス」で作業する女性たち
このプログラムでは、まず今年中に5団体で50名の教育係を育成し、性差別のない職場、女性がリーダーシップを発揮できる環境作りを目指します。また、研修マニュアルやノウハウをECOTA内の他の団体、ひいては広くバングラデシュの衣料品・手工芸品産業全体で活用するよう働きかけていきます。
バングラデシュは世界第2位の衣料品輸出国で、衣料品関連の工場は7,000、働く人の数は500万人と言われておりその多くが18~30歳の若い女性です。彼女たちの立場は弱く、週一日の休みもなく工場長から暴言を受けながら働かされていたり、コロナ禍で仕事が減り補償もなく解雇されたりしています。フェアトレードが先導する女性のエンパワメントが、こういったフェアトレード団体に属さない女性たちを弱い立場から救い出す力になっていくかもしれません。
労働条件の改善を求めてデモをするバングラデシュの衣料品産業で働く女性たち。2019年
このプロジェクトの企画にあたり、国際的な開発NGO「クリスチャン・エイド」がプランニングを一緒に行い資金の3分の2を提供することになりました。
グローバル・ヴィレッジ/ピープルツリーはイギリスの「ピープルツリー・ファンデーション」と共にこのプロジェクトを応援し、残りの費用をまかなえるよう、クラウドファンディングで120万円の資金を集めることにしました。
国際女性デーの本日、クラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」でスタートします。バングラデシュの女性たちを応援するため、ぜひご協力をお願いします。
READYFORのプロジェクトページはこちら
————————————————
グローバル・ヴィレッジについて
グローバル・ヴィレッジは、イベントやキャンペーンを通じて貿易や消費社会の問題点を伝え、途上国の立場の弱い人々の自立を支援 するフェアトレードの普及・促進を行うと共に、生産国の教育・環境プロジェクトの支援を通じて生産者をサポートしています。
こういった活動を安定して継続的に行うため、会員となって活動を支えてくださる方を募集しています。詳しくは、こちら。