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記事: バングラデシュ訪問記
~現地の今 Vol.3 村の学校支援プロジェクト~

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バングラデシュ訪問記
~現地の今 Vol.3 村の学校支援プロジェクト~

2022年~2023年の年末年始にバングラデシュを訪れたグローバル・ヴィレッジ代表 胤森から、3つのプロジェクトそれぞれの今を、3回シリーズでお届けしています。

最後となる3回目は、2022年4月にクラウドファンディングで資金を募り、ご協力いただいたみなさまともに支援している、タナパラ村の小学校再出発のお話です。

2023年の年明け1月1日(日)、バングラデシュ北西部のタナパラ村で活動するフェアトレード団体「タナパラ・スワローズ」が新たにオープンするプレスクール(就学前の児童が通う学校)の開校式が行われました。
4月にベンガル暦の正月を祝うバングラデシュでは、元旦は平日。毎年1月1日は新学年の初日にあたり、政府が小学校などに新しい教科書を一斉に配布します。プレスクールには教科書の配布はありませんが、国全体が新学期の雰囲気に包まれるこの日に合わせ、開校式を行うことにしたのでした。

朝10時、学校の校庭に、4~5歳の子ども達とその母親が次々に集まりました。出迎えるのは、タナパラ・スワローズ代表のライハン・アリさん初めスタッフ10名あまりと、新たにプレスクールに着任した校長のアティクル・ラーマンさん、教員のハリマ・ベグンさん、スライア・カトゥンさん。

 



整列した子ども達、母親達と一緒にバングラデシュ国家を歌ったあと、ライハンさんがこのプレスクールの開校にかけた想いと、グローバル・ヴィレジ/ピープルツリーの支援に対する感謝を述べました。そして、ライハンさんと私の二人で、校舎の入口でテープカット。

 

テープカットに臨むタナパラ・スワローズ代表のライハン・アリさん(中央左)と筆者。脳梗塞の後遺症で左半身が不自由なライハンさんは、スタッフに付き添われてゆっくり一歩ずつ歩いてテープの前へ

 

そして教室に移動する子ども達に、ラーマン校長からお祝いの花を一輪ずつ、私からピープルツリーのひとくちチョコをひとつずつ渡しました。御礼の挨拶代わりに、手にした花を振り振りする子ども達のかわいいこと!この日は気温10℃ほどとバングラデシュとしては異例の寒さで、日本から持参していたダウンコートを着込んでいた私も、心がすっかりあたたまりました。

 

教室でお祝いの花を振る子ども達に囲まれて。ライハンさんの妻でタナパラ・スワローズの総務や経理を担当するギニーさん(前列左から2番目)、アティクル・ラーマン校長(右端)、教員のスライア・カトゥンさん(筆者の後ろ)らと。

 

廊下で我が子を見守っていたお母さん達も教室に招き入れられ、ロジーナ・ベグムさんが母親代表として開校の御礼と学校への期待を述べました。

「遠い日本から支援をいただいて、スワローズの学校が再開されることになり、とても感謝しています。このプレスクールでは、英語を教えてくれるので楽しみです。村の子ども達が才能を伸ばす機会を得られて嬉しく思います」

 

プレスクールへの期待を語るロジーナ・ベグムさん(左)さん

 

開校セレモニーを一通り終え、校長のアティクル・ラーマンさんに話をお聞きしました。

「このプレスクールには、『プレイグループ』という5歳児のクラスに22人、『保育グループ』という4歳児のクラスに10人、合計32人が入学しました。この新しい学校をスタートできて、子ども達も、私自身やスタッフもとても喜んでいます。プレスクールでは、英語のテキストも使ったカリキュラムを実施します」

 



自身もスワローズ小学校の卒業生だったというラーマンさん。教員資格を持ち、自分で塾を経営していました。昨年、ライハンさんからプレスクールの計画を聞いて心動かされ、塾の仕事の一部を同僚に任せて時間をつくることにし、校長として母校の新たな出発を支えることを決めました。
スワローズ小学校の再出発の喜びを語るラーマンさんの表情には、この新たなプロジェクトへの並々ならぬ熱意があふれていました。

ラーマンさんは、昨年11月から入学希望の子ども達を集めて少しずつ実施してきた試行カリキュラムを見せてくれました。日曜から木曜の午前中、英語、算数、国語(ベンガル語)の3教科を言葉遊びなども取り入れながら、小学校入学前の子ども達が楽しく学べる工夫がされています。

 



試行カリキュラムを記録したラーマンさんのノート(上)と、プレスクールで使用する教材(下)

 

スワローズ小学校を卒業して高等教育を受け、自らキャリアを築いてきたラーマンさんの話を聞きながら、学ぶことは人生を切り拓くことなのだと、タナパラ・スワローズが40年以上に渡って守ってきた学び舎の意義をあらためて感じました。

スワローズ小学校の卒業生の中には、作業工房で縫製や刺繍の仕事に就いている人もいます。農業の手伝いや家政婦など、女性の就労の機会が限られているこの村で、読み書きをしっかり学び自信を得ることは、女性達の自立を後押しすることにもなるのです。

 

生産工房で働く(左上から時計回りに)モイナさん、シャハナズさん、ムンニさん、アキさん

 

1976年に貧しい家庭の子どもたちに安心して学べる場を提供することを目的として開校したスワローズ小学校。
近年はバングラデシュ全体で経済成長が続き、タナパラ村でも貧困家庭が以前より減ってきたこと、一昨年から政府が公立学校の就学率を高めるために就学児のいる家庭に助成金を出し始めたことなどで、当初の役割をいったん終えました。

今年から、少人数で質の高い教育を受けられる場として新たなスタートをきったこのプレスクールは、刻々と変化してゆく時代を生きてゆく子ども達が将来の可能性を広げ才能を伸ばす場として、重要な役割を果たしてゆくことでしょう。

これからも、この学校プロジェクトを継続して支援していきたい!という思いを新たにしました。

このプレスクールの運営は主に寄付や助成金でまかなわれており、今回は日本でのクラウドファンディングによる寄付もあって2023年いっぱいの運営の目処が立ちました。現在ライハンさんは、来年以降の継続的な運営のために、欧米のNGOなどへの支援の呼び掛けや助成金の申請を模索しています。

一方、収益事業であるフェアトレード製品の販売やゲストハウスの宿泊料収入を上げることも、タナパラ・スワローズが活動を続けるために重要です。
そのためにも、ピープルツリー/グローバル・ヴィレッジでは、スワローズの手織りや刺繍の技術を生かした魅力的な商品企画、技術研修などにも一層力を入れていきたいと考えています。

 

【バングラデシュ訪問記~現地の今】
Vol.1 20年以上継続する衣料産業労働者の活動支援

Vol.2 女性を応援する研修プロジェクト

Vol.3 村の学校支援プロジェクト ←今回はこちら

 

【これまでの進捗報告はこちら】
クラウドファンディング開始(クラウドファンディングサイト「シンカブル」のプロジェクトページ 2022年4月~)

スワローズ小学校、2023年1月再出発(2022年11月)