コンテンツへスキップ

記事: Time Out Tokyoコラボレーション連載「ボーダレスな人びと」第4回

ファッション

Time Out Tokyoコラボレーション連載「ボーダレスな人びと」第4回

ライフスタイルマガジン「Time Out Tokyo(タイムアウト東京)」とピープル・ツリーのコラボレーション連載、第4回目に登場するのは、女優の東ちづるさん。生きづらさを抱えるマイノリティの人びとのサポートを行い、障害者も健常者もまぜこぜのボーダレスな社会を目指す。その活動について聞いた。



東ちづる(女優、一般社団法人Get in touch理事長)



-まずは「Get in touch」について教えてください。



2012年10月に設立したばかりの団体で、いろいろなマイノリティ団体や個人で活動してきたトップの仲間7人で立ち上げました。そのきっかけは、東日本大震災。新聞記事で、障害者やセクシュアルマイノリティとか、普段から生きづらさを感じている人たちが、避難所の中で孤立してしまったり、自宅に帰るように促されて車中で暮らしたりということを知って。私も20年間さまざまな活動をする中で、正しい知識、理解、支援を、と活動してきましたが、今必要なのは正しい知識より、どんな状況でも誰をも排除しない社会作りだと実感したんです。



-「Get in touch」は「つながる」という意味ですね。



震災後、「つながる」とか「絆」という言葉ばかりが前に出て、違和感がありました。その言葉を口にすることでつながったつもりになるの?というか。日本はチームですっていうのにも。別にひとつの国で同じ方向に団結する必要はなくて、つながりたい時につながれるような社会であるべきだと思ったんです。それで、「Get in touch」とみんなで名付けました。



-具体的にはどのような活動をされているんですか?



アートと音楽を通して、楽しくおしゃれに。啓発、福祉の活動ですが、そのにおいを一切させたくない。私たちは、講演やシンポジウム、デモもしません。他人事だと思っている人たちをいかに巻き込むかっていう活動ですね。楽しそうおもしろそうだから参加してみたら、気づいた!っていう感じ。アートとか音楽とか食とかファッションとか、そういった空間は集いやすいし、見えない壁を超える力があります。たいていの人は自分はマジョリティだと思っていたい。でも、私は世の中にマジョリティは存在しないと思っています。すべての人が何かしらマイノリティ。



-人はなぜマイノリティを排除してしまうのでしょうか?



先進国の中では特に日本は遅れていますね。それは教育もあります。「みんな違ってみんないい」なんて言いますが、都合よく使っているなあと思う。社会に車いすの人や障害のある人やあらゆるマイノリティの人がまぜこぜにいっぱいいますか?っていうとそんなことないですよね。それは、彼らが施設や学園にいたり、あるところに集中的にいたり、共生共存の社会がまったくできていないからなんですよ。違いをハンディキャップにしてしまっている。だから、みんな普段会わない人とどう接していいのかわからないんです。避難所でも悪気はなく排除してしまったんですね。違いをアドバンテージにできれば誰も排除されないはずです。



-“まぜこぜの社会”をつくりたいというのは東さんの使命ですか?



使命感はまったくないです。ただやりたいだけ。私自身、自分の中にまぜこぜがあるはずなのに、光の部分しか出しちゃいけないと思っていたんです。芸能人は評価されなきゃいけない仕事なので、そこはとっても苦悩したんですね。評価のために私は私らしく生きていないんじゃないかと生きづらさを感じた時期もありました。でも、光があれば陰もあるんです。経済にしても、着るもの、食べるものにしても。例えば、そこに児童労働があったり。でもそこは見なくても生きてこられたんです。ふと自分の陰に気づいた時に、そういう社会の陰にいても立ってもいられなくなってしまって。なんで陰の人たちを作らなきゃいけないの?って。政治で変わらないなら、私たちが楽しく変えられるんじゃないかなと。



-仕事をしながらの活動は大変ですね。



仕事とは違う楽しさがあります。仕事はオファーが来て、ニーズがあって、いろんなことで折り合いをつけなきゃいけない。やりたいことをやれません。当然です。だけどこの活動はやりたいようにやっていい。この活動ではロードマップをつくらずに走行しながらF1マシーンを組み立てるような爆走のしかた(笑)。時代の変化も早いし、ハプニングだらけ。でも瞬時に考えて、チームで解決する。私だけの夢だったら単なる妄想なんですが、それをみんなで実現していくことがたまらなくおもしろいんです。4月2日に東京タワーで「世界自閉症啓発デー」のイベントを開催したのですが、どしゃ降りの雨の中1,500人も来てくれたんですよ。みんな何かを知りたくて不安なのかもしれない。 本来の福祉のあり方って、こちらから行くケースが多い。でも私たちは来てほしい。思いきって外へ。まぜこぜになるために。最初はみなさんに迷惑をかけるから不安ですっておっしゃいます。私たちは慣れたスタッフや弁護士や救護隊と万全の態勢で臨みますが、今までトラブルはありません。にぎやかなところや大きな音が苦手と思い込んでいましたが、居心地のいいところでの騒音は楽しいと言われてうれしかった。そういうことが私たちもわかってきました。


-東さんの活動を知りたい、参加したいと思ったらどうしたらいいですか?



ぜひウェブサイトを見てください。そしてイベントに参加してください。ボランティアはその都度募集しています。ただ、何でもやります、何をしたらいいですか?と言う人はノーサンキューかな。何かができる人と何かをしたい人とつながりたいと思っています。 今、ちょうど「Get in touch」のテーマソングをつくっています。PVもつくって、ダウンロードできるようにしたいと企画中です。この歌は社会に対してのメッセージ。普通ってどういうこと?みんな違ってみんないいっていうから、みんなと違うことを楽しくしていたら、どんどん生きづらくなってきたじゃないかっていう歌なの(笑)。PVにはオノ・ヨーコさんとか、いろいろなカムアウトをしている海外のアーティストにも出ていただいたり。すごいスケールのPVをつくるぞ!と意気込んでいます(笑)。



-日本人でカムアウトしている文化人とかアーティストっていますか?



難しいようですね。カムアウトされると社会が変わるのに! 本当に。
ただ、ほかの国にはカムアウトできるような環境があるんですね。日本はまだまだ。社会は人間の手でつくるもの。小さい力でも集うと大きな力になるから、活動を続けることで変わっていくと信じたいですね。ある日突然、私が死んで「Get in touch」がなくなっちゃったっていうんじゃ困るので、今は走りまくっていろんな人とつながって、継続できるようにがんばっています。最近みんなから、東ちづるという事故に遭ったって言われるんですよ。巻き込まれた人がまた違う人を巻き込んで玉突き事故ですって(笑)。お金が発生しないからこそ、自由にクリエイトできて楽しいんですって。楽しいって言うのが何でも基本ですよね。楽しくないと続けられないですね。

20130610_02



東ちづる Chidzuru Azuma
広島県出身。女優。一般社団法人Get in touch理事長。 会社員生活を経て芸能界へ。ドラマから舞台、司会、講演、エッセイ執筆など幅広く活躍。骨髄バンクやドイツ平和村などのボランティア活動や障害者アート支援の活動を続けている。「〈私〉はなぜカウンセリングを受けたのか - いい人、やめた!」母と娘の挑戦」(マガジンハウス)、「らいふ」(講談社)など著書多数。
http://getintouch.or.jp/


衣装協力:
ピープル・ツリー
オーガニックコットン・ボーダー・プリントTシャツ(ブルー)
/products/168115/


About Time Out Tokyo
タイムアウト東京は、街の探索と発見の楽しみを日本語、英語のバイリンガルで伝える“お出かけ促進メディア”。ヴニュー、イベント、特集記事、ブログなどのコンテンツをデイリーで発信しています。
http://www.timeout.jp/

その他の記事