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記事: バングラデシュの女性を応援する研修プロジェクト中間報告
~コロナ感染の再拡大と「認定NGO」の壁~

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バングラデシュの女性を応援する研修プロジェクト中間報告
~コロナ感染の再拡大と「認定NGO」の壁~

バングラデシュには、フェアトレードの手工芸品などの生産に携わる職人が12万人おり、うち8割が女性ですが、管理職レベルで能力を発揮している女性はまだ多くありません。そのため、バングラデシュのフェアトレード団体ネットワーク「ECOTA」と現地の開発NGO「クリスチャン・エイド」の協力のもと、半年かけて女性のエンパワメントを目指す研修プログラムを企画しました。

このプロジェクト実施のため、グローバル・ヴィレッジは2021年3月にクラウドファンディングを実施し、120万円の目標を大きく超える146万2,000円のご支援をお寄せいただきました。あらためて、ご協力いただいたお一人おひとりに感謝申し上げます。

当初の予定では、2021年内に50名の教育係を育成し、性差別のない職場、女性がリーダーシップを発揮できる環境作りを始めることとしていました。研修実施後は、研修マニュアルやノウハウを、他のフェアトレード団体やフェアトレードでない衣料品工場などにも活用するよう働きかけることで、広くバングラデシュでものづくりに関わる女性たちの能力と地位を向上させることを目指しています。

しかしながら、バングラデシュではコロナウイルス感染の再拡大によって4月中旬からロックダウンが敷かれて経済・社会活動が制約を受けており、状況が改善するまでプロジェクトの着手を見合わせざるを得なくなりました。

また、プロジェクトの実施に先立ち、ECOTAが海外から活動資金を受け取るために「認定NGO」として認可を受ける必要がありますが、その手続きが当初予想より煩雑で費用もかかることが分かり、ECOTAで対応を検討中です。

ECOTA理事長のスワパン・ダスさんは、実施時期を延期してもプロジェクトを実現させたいという強い意志を持っており、クリスチャン・エイドからも引き続きプロジェクト実施に協力する旨の確認を得ています。そのため、引き続きスワパンさんを初めとする関係者と連絡を取り合いながら、プロジェクト実現の可能性を信じて状況を見守ることにしました。

 

バングラデシュのコロナ禍の状況

3月中旬からコロナウイルスの感染が急拡大し、4月中旬からすべての経済活動や交通機関がストップされる厳しいロックダウンが敷かれました。5月末にいったんは収束に向かったかと思われた状況はデルタ株の感染増加によって再び悪化し、日本とほぼ同じ人口のこの国で、7月上旬から毎日1万人を超える人が感染し200人あまりが亡くなっています。

ロックダウンは7月1日からさらに強化され、規制違反の取り締まりで警察に収監されたり、罰金を科される人も出ています。厳しい規制により、日雇いなどの低賃金の労働者の人びとはただでさえ収入の少ないモンスーンのシーズンにさらに仕事が減り、困窮しています。

バングラデシュ政府は、「イード・アル・アドハ(イスラムの祝日)」期間中の7月15日から22日までロックダウンを緩和し、電車は乗車率50%までの乗客で運行、商店の営業も認めるなど、感染を防止しながら経済や社会活動を再開する一方で、翌23日から8月5日まで再び厳しい規制に戻すなど、難しい舵取りを迫られています。

バングラデシュの一日あたりの感染者数
出典:https://www.worldometers.info/coronavirus/country/bangladesh/

 

「認定NGO」のハードル



バングラデシュでは、NGOやNPOが海外から活動資金や寄付を受けるには、内務省が管轄する「NGO庁」から認可を受けて「認定NGO」となる必要があります。


ECOTAは30年前にバングラデシュのフェアトレード団体が連携して活動を強化しようと自主的に立ち上げたネットワークで、現在36団体が加盟して経験やノウハウを共有したり、共同で研修を行ったりしています。長年の活動実績がありますが、認定NGOにはなっていませんでした。

ここ数年、バングラデシュ政府は海外からの資金流入を厳しく管理するようになり、認定NGO以外の団体が海外から資金を受け取ることが難しくなっています。


今回の研修プロジェクトの企画が始まったとき、国際的な認定NGOであるクリスチャン・エイドの協力を得るほか、日本のグローバル・ヴィレッジと姉妹組織であるイギリスのピープルツリー・ファウンデーションから資金を受け取る見込みとなったことから、ECOTAはNGO庁に認可の申請をすることを決めました。


ところが、必要な手続きについて詳細を調べたところ、NGO庁が決めた会計基準に則った書類の作成など膨大な書類の提出が必要なだけでなく、過去に遡って税金の支払いが必要となるなど、相当な費用もかかることが判明しました。

さらに、ロックダウン下で行政の窓口も閉まってしまい、いつ手続きができるかの目処も立ちません。


しかし、認定NGOになることは、今回の研修プロジェクトのためだけでなく、今後ECOTAが加盟団体のためにさまざまな活動を展開し組織を維持するためにも必要な手続きであることから、引き続き申請を目指すこととし、ECOTA内で対応を検討中です。

 

4月~7月の進捗


グローバル・ヴィレッジは、イギリスのピープルツリー・ファウンデーションと共にこのプロジェクトを支援し、メールによる状況の確認や、オンライン会議による意見交換を続けています。


4月8日、日本のクラウドファンディングの最終日に、ECOTA理事長のスワパン・ダスさん、手仕事の職人たちを束ねるフェアトレード団体の代表モンジュ・ハクさん、ピープルツリー・ファウンデーションの同僚2名の5名で進捗確認のオンライン・ミーティングを行いました。

ECOTAでは、研修プロジェクトを主導するコーディネーターの選考を準備していましたが、4月14日からロックダウンが敷かれすべての経済活動や交通機関がストップすることになったため、スケジュールが見通せなくなりました。


とはいえ、まずは日本からの資金の目処が立ったことでプロジェクトが大きく一歩前進したとスワパンさん、モンジュさんも喜んでくれ、少しずつでも前に進むことが大切という思いを共有できました。

ECOTA理事長のスワパン・ダスさん(左下)、フェアトレード団体代表のモンジュ・ハクさん(右下)、ピープルツリー・ファウンデーションのルース・ヴァリアント(左上)、ケイト・ウェイクリング(右上)とのオンライン・ミーティング

 

5月中旬、バングラデシュでは感染者数が減少しロックダウン解除の可能性も見えたことから、ECOTAはプロジェクト・コーディネーターにシャンティ・パダ・サハさんを任命しました。サハさんはフェアトレード団体の「ディベロップメント・ウィール」などで財務や組織管理を担当している男性で、人道支援のNGOで28年間働いた経験を持っています。


サハさんはまず、ECOTAの認定NGO申請の手続きに着手しました。しかしそこで判明したのは、膨大な書類の作成が必要で手続きも複雑なため、認可を受けるのに相当な時間がかかるということと、過去に遡って税金が課されるなどで、費用が3,000ドル以上かかりそうだという厳しい現実でした。

さらに、コロナウイルスの感染状況の改善が限定的だったことからロックダウンの延長が決まり、行政の業務も制限されたことで、申請手続きが受理されるかすらも不透明になりました。


ECOTAでは、必要書類の作成だけは少しずつでも進めようとしていますが、事務所にスタッフが出勤することもままならず、できる作業は限られています。スケジュールが見通せない中でサハさんがプロジェクトに時間を費やすことは難しく、準備作業はいったん中断せざるを得ませんでした。


7月中旬、現地の状況の確認をするためのスワパンさんとメールのやり取りの中で、今後スワパンさんがどれだけ責任持ってプロジェクトを進められるか、率直に質問しました。というのも、スワパンさんは、ECOTAだけでなく「プロクリティ」というピープルツリーの生産者パートナーであるフェアトレード団体を率いる立場にあり、経済状況が悪化する中、その運営だけでも大変なはずだからです。


「このパンデミックが収束するまで、プロジェクトの実施を延期せざるを得ません。しかし、このプロジェクトをあきらめるべきではありません。研修によって、長い目で見れば数多くの女性たちが生活の向上をはかることができる可能性を秘めたプロジェクトですから」


スワパンさんの言葉は、長年フェアトレード団体で職人たちを支えてきた経験と責任感に裏打ちされていると感じました。

プロクリティの生産者グループでバスケットを編む女性(左)と、代表のスワパンさん(右)

 

しかし、大きなハードルとなっている認定NGOの申請について、スワパンさんは、「認定NGOとなることをあきらめて、資金の受け取りについては別の方法を考えた方がいいかもしれない」と困り果てた様子でした。

一方で、「認定NGOになることは、今回の研修プロジェクトのためだけでなく、今後ECOTAが加盟団体のためにさまざまな活動を展開するには絶対に必要なことであり、長期的に、組織を維持するためにも大切です」とも。


このやり取りに、クリスチャン・エイドのファラナ・アフロスさんも応援のコメントを寄せてくれました。

「認定NGOの申請はぜひ続けてください。クリスチャン・エイドはこの研修プロジェクトが意義あるものと信じて一緒に実現を目指しています」


「それでは、パンデミックが収束したら手続きをなんとか進めてください。研修プロジェクトを実現するスワパンさんの強い意思が確認できたので、私たちは根気よく見守り、応援します」との私のメッセージに、

「ポジティブにとらえてくれてありがとう! ECOTAの加盟団体の中には認定NGOに登録されている団体もあるので、手続きの代行などができないか、などの可能性をECOTAの他の理事とも話し合ってみます。今後の進め方を決めたら、また報告します」と、スワパンさんは約束してくれました。


実施時期は当初の予定より遅れますが、必ずこのプロジェクトを実現するよう、これからも密にコミュニケーションを取りながら見守り協力していこうという思いを強くしました。


 

資金の状況と今後の予定


クラウドファンディングでみなさまからお寄せいただいた支援金は、「READYFOR」の手数料を除いた123万6,852円が、6月中旬にグローバル・ヴィレッジの口座に届いています。

この資金は、ECOTAが認定NGOとなって海外からの資金を受け取れるようになり、研修プロジェクトのスケジュールをあらためて練り直した時点で、必要な金額を順次送金することとします。

スワパンさんを始めとするプロジェクトのメンバーとは引き続き、メールやオンライン会議で進捗を共有し、必要なサポートを検討してまいります。


プロジェクトの進捗は、引き続きこの「FAIR TRADE STYLE」や、クラウドファンディングサイト「READYOR」の「新着情報」ページでお伝えいたしますので、これからもプロジェクトを見守っていただけるようお願いいたします。

 

グローバル・ヴィレッジ
代表 胤森なお子