「今の日本で暮らしていて、生活のすべてを100%フェアトレードのアイテムにしようと思ったら大変。だから、できるところから少しずつエシカルなものを入れるようにしています」と語る釘宮さん。
そもそも釘宮さんとフェアトレードの出会いは12年前。
「アメリカ留学していたときに、近所にあったフェアトレードショップでシルバーアクセサリーを見つけ、かわいいなと思って購入したんです。その後、大学でスペイン語を学ぶ中でメキシコにも行き、世界の貧富の差を目の当たりにし、本当の意味でフェアトレードの意義を感じました」。
そんな釘宮さんは、日本に帰国してから 『おしゃれなエコが世界を救う』(サフィア・ミニー著/日経BP社刊)を読み、ファッションを通じてフェアトレードの理念を広げていくという活動に共感し、ピープルツリーに入社しました。
「ピープルツリーのスタッフとして“買うだけでできる社会貢献”があること、それを存続させていくことを伝えていく中で、自分が結婚するときはエシカルな要素を取り入れたウエディングにしようという思いが強くなっていったのは自然なことのように感じています。普段、友人たちと話していても『ピープルツリーのチョコレートは知っているけれど、洋服もつくっているの?』と驚かれることが多くて、自分の結婚式はフェアトレード、そしてピープルツリーの活動について知ってもらういい機会だと思ったのです」。
ウエディングドレス選びの際は、初めてフェアトレードのアクセサリーを買ったときと同じようにデザインに惹かれたと言います。「これを着たい!」という素朴な思いが何より先に沸き起こったそうです。
「ゲストを自宅に招いたようなアットホームな披露宴のプランに、ピープルツリーのウエディングドレスを選んだのは正解でした。コンパクトなシルエットは、小さな部屋を移動する形のパーティーにぴったりだし、オフホワイトの生地はアンティークな会場の雰囲気に合っていたからです。それにコットンシルクのふんわりとした素材も気に入りました。式が終わった後に丈を詰めたり、染めたりして、普段にも着られるようにリメイクできると聞いたこともいいなと思って。人生の大切なときに着るウエディングドレスがクローゼットにしまったままになってしまうのもなんだか寂しいし……と、いろいろ考えてエンパイアシルエットの一枚を購入しました」。
和装もしてみたかったという釘宮さんは、神社で和装の式を挙げた後に、レストランに移動してピープルツリーのウエディングドレスを着用したのだとか。
「レストランウエディングを多く手がける会場のフィッティングスタッフの方に『すごくいいドレスですね』と言われたのはうれしかったですね。たくさんのウエディングドレスを見て、触っている人が高い関心を持って褒めてくれたんです」。
レストランウエディングでは、パートナーの友人が司会を務め、フェアトレードのこと、ピープルツリーのこと、ウエディングドレスがバングラデシュで手作りされたものだということをゲストのみんなに紹介してくれたそう。
「ゲストとの会話ではドレスをきっかけに、フェアトレードのことなどで話が弾みました。そういうものにもみんなが関心を持ってくれて、エシカルを取り入れたウエディングにしてよかったなと思いました。無理をしていると、続けることが苦しくなってしまうけれど、できるところで自分らしくやれば楽しく続けられる。私の場合は、遠方からの参列者が多かったので引き出物はカタログにして、フェアトレードのものにできなかったけれど、来てくださった方にフェアトレードのことを知ってもらうことができたらから、それで十分だと思っています」。