学生時代には ジェトロ※出身の先生のもとで開発経済を学び、社会人になってからは、インドとペルーの専門貿易会社を経て、ピープルツリーで営業職に就いた矢山さんにとって、フェアトレードやエシカルウエディングは、特別なことではなかったといいます。
「3.11以降、原発に頼らない生活をしていこうとしていたパートナーと結婚することになったとき、エシカルウエディングは自然な選択肢として私たちの中にありました。二人とも“アクションするときは意味のあることをしたい”と常々考えていたので、手間のかかることであっても、ひとつひとつ決めていくのはとてもやりがいがありました」。
会場は美しさもさることながら歴史的価値も高い大磯迎賓館。
そんな矢山さんたちが会場に選んだのは、日本最古の2×4工法で建てられ、国登録有形文化財に指定されている大磯迎賓館。
「結婚を機に大磯に移り住んだので、大磯迎賓館を会場に選ぶことで大磯のよさをゲストの方に知っていただいたり、歴史的建造物を次世代に残していくことに少しでも貢献できればと考えたのです」。
式の当日、矢山さんが着用したドレスはピープルツリーの2015年ショップ限定のデザインの一着です。
「展示会で見たときに、裾の刺繍に魅了されました。フェアトレードであることももちろん大切だけれど、やっぱり美しいドレスが着たいとも思っていたので、このドレスを見たときにはこれしかない!と思いましたね(笑)。ブーケやヘッドアクセは、イベントで1度だけ使われて廃棄されてしまう花を再利用するお花でつくったPacosのもの。引き菓子は、大磯の福祉施設の作業所でつくられた手づくりのクッキーを選びました。結婚式だけで何か大きなことができるわけではないけれど、自分たちが動くときには、自分たちでできる限りの意味のあることがしたい。ゲストの方々に私たちが暮らす地域の魅力を知ってもらったり、自分たちが選択するものに関心を持ってもらうことで、少しでも社会貢献につながればと」。
ドレスのすその刺繍が大磯の光に美しく映えています。
ブーケやヘッドアクセは廃棄花を再利用してつくられたもの。
ピープルツリーの手漉き紙を使った席次表とメニュー。
惚れ込んで選んだピープルツリーのウエディングドレスは、ゲストの方からも好評でした。
「着ていてとても楽だったので自然と笑顔にもなれましたし、ゲストの方との会話も弾みました。丁寧につくられているから着心地がいいのでしょうね。モノはモノとして置いたままになってもかわいそうだし、使ってはじめて意味が生まれる。だからウエディングドレスは、リメイクをしてこれからも着れるようにしたいと思っています。また大磯迎賓館は、よくある結婚式場とは異なり、制約が少なく持ち込みが自由だったので、ウェルカムドリンクはピープルツリーのハイビスカス×レモングラスティーにしてもらい、ペーパーアイテムもピープルツリーのものを選びました。」
「エシカルウエディングは、誰かが誰かによって搾取されるのではなく、関わる人びとがwin-winな仕組みで実現できること。フェアトレードのアイテムを取り入れれば、つくり手もハッピーになれる。社会貢献をしたいと思ったときに寄付をして、つい一回きりでおしまいになってしまったり、一方通行になってしまいがちだけれど、フェアトレードは、循環型で持続可能なんです。エシカルウエディングで、その機会が少しでも増えたらいいな、と思っています」。
ジェトロ
JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)。開発途上国の調査研究を通じて、日本の貿易拡大と経済協力を促している団体。